地元の少年野球の大会に協賛金を出している。社員が毎年、マラソン大会のボランティアに出ている。こうした活動を、会社のサステナビリティの報告にどう書けばよいのか。寄附と協賛では何が違うのか。効果を聞かれたら、何を答えればよいのか。担当になって、初めて考える方も多いと思います。
スポーツCSRとは、スポーツ教室や大会への協賛、パラスポーツの支援などを通じて、企業が社会への責任を果たそうとする活動のことです。国や国際規格に「スポーツCSR」という決まった定義はありません。大事なのは、活動を増やすことよりも、何を出すのか(お金、人、場所、技術)を決め、参加人数の先にある変化を1つ測り、寄附か協賛かに合わせて会計の処理を分けることです。
この記事では、国の資料、リーグと企業の公式の発表、国税庁の資料をもとに、活動の型、効果の測り方、お金の扱い、発信の前の確認点を整理します。税務は一般的な取扱いの紹介です。個別の判断は税理士に確かめてください。
スポーツCSRとはスポーツを通じて社会への責任を果たす活動
CSRは「企業の社会的責任」の略です。経済産業省は、企業が社会や環境と共存し、持続可能な成長を図るため、その活動の影響について責任をとる企業行動だと説明しています。
スポーツの活動は、このなかのどこに入るのでしょうか。社会的責任の国際規格であるISO 26000は、7つの中核主題を挙げていて、その1つが「コミュニティへの参画及びコミュニティの発展」です。経団連の企業行動憲章にも、「良き企業市民」として積極的に社会に参画し、その発展に貢献するという原則があります。スポーツ教室や大会への協賛は、ここにあたります。
ただし、CSRは地域への貢献だけではありません。7つの主題には、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行なども含まれます。協賛する相手が暴力やハラスメントにどう向き合っているか、活動を実際より大きく見せていないかも、同じCSRのなかの話です。なお、ISO 26000は認証のための規格ではありません。「ISO 26000を取得した」という言い方は、規格の側が誤用だとしています。
よく一緒に出てくる言葉との違いを、表にまとめました。
| 言葉 | 誰の視点か | 意味 |
|---|---|---|
| CSR | 企業 | 自社の活動が社会や環境に与える影響に、責任を持って行動すること |
| ESG | 投資家 | 環境、社会、ガバナンスの3つの観点。投資の判断で企業を見るときに使われる |
| SDGs | 国際社会 | 2015年に国連で採択された、2030年までの17のゴールと169のターゲット |
CSRと関連する言葉の違い(経済産業省、スポーツ庁の説明などをもとにHuman Soarが整理)
スポーツの活動は、CSRとして行い、SDGsのゴールに照らして説明し、ESGの「社会」の取り組みとして開示する、という関係になります。スポーツとSDGsの関係はスポーツとSDGs・ESGの企業の取り組み事例でも扱っています。
(参考)価値創造経営、開示・対話、企業会計、CSR(企業の社会的責任)について – 経済産業省
(参考)ISO 26000を理解する(Discovering ISO 26000) – 日本規格協会
Q. スポーツCSRとは何ですか?
スポーツを通じて、企業が社会への責任を果たそうとする活動のことです。スポーツ教室、大会への協賛、パラスポーツの支援、環境への取り組みなどが含まれます。国の法律や計画、国際規格に「スポーツCSR」という決まった定義はありません。社会的責任の国際規格ISO 26000でいえば、「コミュニティへの参画及びコミュニティの発展」にあたる活動が中心です。
スポーツCSRの活動は5つの型に分けられる
企業の公式の発表で実績の数字まで確かめられた活動を、5つの型に分けました。自社が出せるものと見比べてみてください。
| 型 | 企業が主に出すもの | 公式の発表にある例 |
|---|---|---|
| スポーツ教室と次世代の育成 | 人(選手や社員)、場所 | ENEOS野球部の野球教室 |
| パラスポーツと大会への協賛 | お金、人(ボランティア) | 大同生命の全国障害者スポーツ大会への特別協賛 |
| 災害からの復興の応援 | お金、人 | キリンと日本サッカー協会のサッカー教室 |
| 環境への取り組み | 技術、証書など | Jリーグの公式試合の電力の再エネ化 |
| 国際貢献 | 技術、プログラム | ミズノのベトナムでの運動プログラム |
スポーツCSRの5つの型(出典:各社とJリーグ、文部科学省の公式の発表。2026年10月10日に確認)
このほか、従業員の健康づくりにスポーツを使う取り組みもあります。スポーツ庁の「スポーツエールカンパニー」は、2026年に1,635団体が認定されました。認定の基準はスポーツエールカンパニーの認定基準と申請方法にまとめています。
スポーツ教室と次世代の育成
いちばん始めやすいのが、子ども向けのスポーツ教室です。ENEOSは、野球部による野球教室を2005年度から続けており、2023年度は全10回で、計474名の小中学生が参加したと発表しています。
自社にチームがなくても、協賛しているクラブと一緒に開く方法があります。出すものが「人」と「場所」なので、協賛金だけの関わりよりも、社員が顔を出しやすい型です。
(参考)ENEOS野球部による2023年度の野球教室に関するニュースリリース(2024年3月7日) – ENEOS
パラスポーツと大会への協賛
大会への協賛は、長く続けることで意味が出てきます。大同生命は、全国障害者スポーツ大会の前身の大会が始まった1992年から協賛を続けています。文部科学省は、2026年の第25回大会に、同社から1億円の特別協賛金が寄せられたと発表しました。
お金だけでなく、社員が大会のボランティアとして関わっている点も、この例の特徴です。障害のある選手を社員として迎える方法についてはアスリート社員とはの記事でふれています。
(参考)大同生命保険株式会社から第25回全国障害者スポーツ大会に対する協賛金をいただきました(2026年7月31日) – 文部科学省
災害からの復興の応援
災害のあとに、スポーツで地域を元気づける活動もあります。キリンは日本サッカー協会とともに、東日本大震災のあと、岩手、宮城、福島の小学校で6年にわたってサッカー教室を行い、693校で約10万人が参加したと、2024年の発表のなかで振り返っています。
こうした活動は、自社だけで行うより、競技団体や自治体と組んだほうが、必要な場所に届きやすくなります。
環境への取り組み
スポーツの場を使って、環境への取り組みを見える形にする例もあります。Jリーグは、パートナーの企業が持つ証書を使い、2023年から公式試合の電力を実質的に再生可能エネルギーでまかなっています。2025年は1,219試合が対象でした。
自社の本業に近い技術や仕組みを出す型なので、エネルギーや通信、素材の会社に向いています。
(参考)Jリーグインパクトレポート2025 サステナビリティ活動に関する報告書 – Jリーグ
国際貢献
海外での活動もあります。ミズノは、子ども向けの運動プログラムをベトナムの小学校に広める事業を行い、2019年12月の時点で63都市、約200校に導入されたと発表しています。これは、国の「スポーツ・フォー・トゥモロー」の認定事業でした。
スポーツ・フォー・トゥモローは、2014年から2021年の8年間で、204の国と地域の1,300万人を超える人々にスポーツを届けたとされています。民間の企業も、コンソーシアムの会員として参加できます。
(参考)対ベトナム・初等義務教育・ミズノヘキサスロン運動プログラム導入普及促進事業 スポーツ庁長官感謝状受章(2019年12月10日) – ミズノ
(参考)能登半島地震復興応援プロジェクト「JFA・キリン ビッグスマイルフィールド in 能登町」を開催(2024年4月25日) – キリンホールディングス
(参考)スポーツエールカンパニー – スポーツ庁 Sport in Lifeプロジェクト
Jリーグのシャレン!は企業が3者目として入れるスポーツCSRの入口

自社だけで活動を立ち上げるのが難しいなら、すでにある枠組みに入る方法があります。その1つが、Jリーグの「シャレン!(社会連携活動)」です。
シャレン!は2018年に始まりました。教育、健康、まちづくりなどの共通のテーマに、地域の人、企業や団体、自治体、学校と、Jリーグやクラブが、3者以上で取り組む活動です。Jリーグの報告書によると、2025シーズンに全60クラブが行ったホームタウン活動は年間3万2,806回で、そのうちシャレン!は4,109回でした。
活動の目的を見ると、サッカーの普及がいちばん多いものの、教育や、介護予防と健康増進もそれぞれ8,000回を超えています。自社の事業に近いテーマがあれば、地元のクラブに「3者目」として加われないか、相談してみる価値があります。
バスケットボールのBリーグも、2017年に「B.LEAGUE Hope」を立ち上げ、パートナーの企業を巻き込んだ社会的責任の活動を進めています。国の法律でも、スポーツ基本法が、民間の事業者を含む関係者が連携して協働するよう努めることを定めています。
(参考)Jリーグインパクトレポート2025 サステナビリティ活動に関する報告書 – Jリーグ
(参考)B.LEAGUE HOPEとは – B.LEAGUE
スポーツCSRの効果は参加人数の先にある変化で測る

効果を聞かれたとき、開いた回数や参加した人数だけを答えていないでしょうか。それは「アウトプット」と呼ばれるもので、効果そのものではありません。
内閣府の作業部会がまとめた報告書は、提供した活動の規模を示すアウトプットだけで評価することは、社会的インパクト評価ではないとしています。これまではイベントに何人参加したかで止まる例が多かったが、事業によってどんな変化が生まれたかまで、もう一歩踏み出すことが必要だ、という指摘です。
変化のほうは「アウトカム」と呼ばれます。たとえば、教室に参加した子どもが運動を続けるようになったか、研修を受けた社員の行動が変わったか、といったことです。全部を測る必要はありません。活動ごとに、確かめたい変化を1つ決め、参加した人へのアンケートなどで追うところから始められます。
変化をお金に直して示す方法に、SROI(社会的投資収益率)があります。FC東京とパートナーのインテリジェントウェイブは、サッカーの体験と観戦を使った研修について、投資した額の4.69倍の社会的な価値が生まれたと2025年に発表しました。大分トリニータとパートナーの企業も、試合の日のイベントについて4.21という値を公表しています。
ただし、どちらも1つの事業についての推計で、前提の置き方もそれぞれ違います。倍率を、クラブどうしや企業どうしで比べることはできません。Jリーグ自身も、報告書のなかで、活動の質を評価できる指標は検討中だとしています。
(参考)社会的インパクト評価の推進に向けて(平成28年3月) – 内閣府
(参考)FC東京とインテリジェントウェイブ ダイバーシティ&インクルージョン研修でSROI分析を実施(2025年10月7日) – FC東京
(参考)大分トリニータ:2025シャレン!アウォーズ – Jリーグ
(参考)Jリーグインパクトレポート2025 サステナビリティ活動に関する報告書 – Jリーグ
Q. スポーツCSRの効果はどう測ればよいですか?
回数や参加人数(アウトプット)に加えて、活動によって生まれた変化(アウトカム)を1つ決めて測ります。内閣府の報告書は、アウトプットだけで評価することは社会的インパクト評価ではないとしています。変化をお金に直すSROIという方法もあり、Jリーグのクラブとパートナーの企業が4.69倍や4.21という値を公表していますが、個別の事業の推計なので、ほかと比べる数字ではありません。
スポーツCSRのお金は寄附か協賛かで税の扱いが変わる
同じ100万円でも、何の対価として、誰に払うかで、税務の扱いが変わります。おおまかな違いを表にしました。
| お金の出し方 | 見返り | 法人税での扱い |
|---|---|---|
| 協賛金(広告の対価) | 社名の表示などの宣伝の効果 | 広告宣伝費 |
| 一般の寄附金 | なし | 資本金と所得から計算する限度額まで損金 |
| 公益財団法人などへの寄附金 | なし | 一般の寄附金とは別の枠で、限度額まで損金 |
| 企業版ふるさと納税 | 経済的な見返りは禁止 | 損金算入と税額控除を合わせて最大約9割の軽減 |
スポーツへの支出の税務上の区分(出典:国税庁タックスアンサー、内閣府の資料。個別の判断は税理士に確認)
分かれ目は、名目ではなく、見返りがあるかどうかです。国税庁は、不特定多数の人への宣伝の効果を意図した費用は広告宣伝費になるとしています。一方、見返りを求めずに渡すお金は、協賛金という名前でも寄附金として扱われ、損金に入れられる額に上限がかかります。
寄附の相手によっても変わります。日本スポーツ協会は公益財団法人で、同協会への寄付金には、特定公益増進法人としての税制上の優遇が適用されると案内しています。これに対して、プロのクラブの多くは株式会社です。見返りなしでお金を渡せば、一般の寄附金になります。
自治体のスポーツの事業を応援するなら、企業版ふるさと納税も選べます。内閣府の資料によると、寄附の額の最大約9割が軽減されますが、本社がある自治体への寄附は対象外で、10万円以上の寄附が対象です。使い方は下の記事でくわしく扱っています。
あわせて読みたい企業版ふるさと納税でスポーツ支援|スポンサーとの違いと使い方›
(参考)No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分 – 国税庁
(参考)No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算 – 国税庁
(参考)No.5283 特定公益増進法人に対する寄附金 – 国税庁
(参考)企業版ふるさと納税 概要 – 内閣府地方創生推進事務局
Q. スポーツへの協賛金は寄附金になりますか?
見返りがあるかどうかで分かれます。社名の表示など、不特定多数の人への宣伝の効果を意図した支出は、広告宣伝費として扱われます。見返りを求めない支援は、名前が協賛金でも寄附金として扱われ、損金に入れられる額に上限があります。国税庁は、区分は個々の実態で判定するとしているので、契約の内容をもとに税理士に確かめてください。
スポーツCSRを発信する前に確かめる3つの点
よい活動でも、伝え方を誤ると、実態より大きく見せていると受け取られます。発信の前に、次の3つを確かめます。
数字に出どころと時点を付ける
参加した人数や回数には、いつの、何の数字かを添えます。1回だけのイベントを「継続的な支援」と書いたり、「スポーツの力で社会を変える」といった言葉だけで終えたりすると、中身が伝わりません。
経団連の企業行動憲章も、企業の情報を積極的に、効果的に、そして公正に開示することを原則に挙げています。数字と出どころをそろえて書くことが、公正な開示の第一歩です。
環境の言葉は範囲と手段を書く
「CO2実質ゼロの試合」のような環境の言葉は、特に注意が要ります。環境省のガイドラインは、あいまいな表現や環境についての主張は行わないことを求めています。環境の表示をめぐっては、消費者庁が景品表示法にもとづく措置命令を出した例もあります。
書くときは、対象が電力だけなのか移動も含むのか、証書を使ったのか実際の再生可能エネルギーなのかを示します。Jリーグの報告書も、対象を「電力由来」と限って書いています。
(参考)【参考】環境表示について不適切と指摘された事例 – 環境省
(参考)Jリーグインパクトレポート2025 サステナビリティ活動に関する報告書 – Jリーグ
協賛する相手の人権への対応を確かめる
支援する相手のことも、自社の責任の範囲に入ってきます。政府の人権尊重のガイドラインは、法的な拘束力はないとしたうえで、日本で事業を行うすべての企業に、取引先などの人権の尊重に最大限努めるよう求めています。
このガイドラインは、スポーツの協賛を名指ししているわけではありません。それでも、協賛先のチームや団体が、暴力やハラスメント、差別にどう対応しているかを確かめておくことは、自社を守ることにつながります。公開されている情報での確かめ方は、下の記事で紹介しています。
あわせて読みたいスポーツインテグリティとは|脅かす要因と企業の協賛前の確認›
(参考)責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン(令和4年9月) – ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議
まとめ|スポーツCSRは出すものと測る変化を先に決める
スポーツCSRは、決まった型のある制度ではありません。要点を振り返ります。
- スポーツCSRに公的な定義はなく、国際規格でいえば地域への参画にあたる活動が中心
- 活動は、スポーツ教室、パラスポーツと大会への協賛、復興の応援、環境、国際貢献の5つの型に分けられる
- Jリーグのシャレン!のように、企業が3者目として入れる枠組みがある
- 効果は、参加人数だけでなく、活動で生まれた変化を1つ決めて測る
- お金は、見返りのある協賛か、見返りのない寄附かで、税の扱いが変わる
これから始めるなら、まず、自社が出せるものを「お金、人、場所、技術」の4つで書き出してみてください。そのうえで、地元のクラブや競技団体、自治体に、いま困っていることを聞いてみると、無理のない形が見つかりやすくなります。スポーツ業界の課題の全体像は日本スポーツ業界の8つの課題で整理しています。
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