スポーツスポンサーの活用は、契約で得た権利を一覧にし、契約直後・開幕前・シーズン中・オフ・更新判断の5つの時期に割り振った年間計画表を作るところから始まります。社員観戦、社内報、取引先招待、SNSでの発信を試合の日程に合わせて配置し、時期ごとに数字を記録しておけば、1年後の更新判断にそのまま使えます。
協賛の契約が決まり、クラブから権利の一覧が届いた。招待券は何枚もあるし、冠試合の日も選べる。でも、いつ誰を招いて、何を社内で発信すればよいのかは誰も決めていない。気づけば秋になり、招待券の半分が使われないまま残っている。ここでは、そうならないための1年間の計画の立て方を、Jリーグ・Bリーグの公式日程を例に整理します。
スポーツスポンサーの活用は時期を分けた年間計画から始める

協賛の1年は、契約直後、開幕前、シーズン中、オフ、更新判断の5つの時期に分けると計画を立てやすくなります。契約直後は権利を一覧にして社内の窓口を決め、開幕前は社内への告知と始める前の数字取りを済ませます。シーズン中は社員観戦、取引先招待、SNSでの発信を回し、オフに上期を振り返って下期を見直します。最後に年間の報告をまとめ、続けるかどうかを決めます。
時期で分けるのは、権利の多くが試合の日程に縛られているからです。冠試合や招待席は使える日が決まっており、試合のない時期には使えません。逆に、振り返りや予算の相談は試合のない時期のほうが進めやすい作業です。
Jリーグは2026-27シーズンから、夏に開幕し、冬にウインターブレークを挟んで、翌年の春から初夏に閉幕する日程に移りました。試合の流れが変わったので、前の年の計画をそのまま使わず、新しい日程に合わせて組み直します。協賛で得た権利をどう施策に変えるかの考え方と事例はスポンサーシップ アクティベーションとはで整理しています。この記事では、その施策を1年のどこに置くかに絞って説明します。
(参考)シーズン移行の検討 – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ
Q. スポーツスポンサーの活用は何から始めればよいですか?
契約で得た権利を一覧にし、それぞれを使う時期を年間の計画表に書き込むことから始めます。招待券や冠試合のように回数や日付が決まっている権利は、使い忘れると翌年に持ち越せないことがあるため、契約直後に社内の担当者と日付を押さえておくと確実です。
Jリーグ・Bリーグの日程で作るスポーツ協賛の月別計画表
月別の計画表は、左にリーグの日程、右に担当者の作業を並べて作ります。下の表は、2026/27シーズンのJ1クラブに協賛した企業を例に、公式発表の日付と、その時期にやる作業を並べたものです。
| 時期 | リーグの日程(2026/27) | 担当者の作業 |
|---|---|---|
| 6〜7月 | J1の対戦カード発表(6月16日)、2026年開催分の詳細発表(7月1日予定と告知) | 権利を一覧にする。社内の窓口と予算の配分を決める。観戦日と招待日の候補を押さえる |
| 8月 | J1開幕(8月7日)、J2・J3開幕(8月8日) | 社内に協賛を告知する。SNSの発信ルールを固める。始める前の数字を取る |
| 9〜10月 | B.PREMIERとB.ONEのレギュラーシーズン開幕(9月22日) | 社員観戦の1回目を開く。翌月の社内報に観戦の様子を載せる |
| 11〜12月 | J1は12月19日の第20節まで、J2・J3は12月13日の第22節まで | 年末のあいさつに合わせて取引先を招く。上期の記録を締める |
| 12月中旬〜2月 | Jリーグのウインターブレーク(J1は2月13日、J2・J3は2月20日に再開) | 上期を振り返り、下期の施策を見直す。翌年度の予算を社内で相談する |
| 2〜4月 | Jリーグ再開。Bリーグは終盤 | 社員観戦の2回目を開く。4月は新入社員を招く機会にする |
| 5〜6月 | B.PREMIERのレギュラーシーズン最終日(5月2日)、J2・J3最終節(5月23日)、J1最終節(6月6日) | 年間の報告をまとめ、契約の期限までに続けるかを伝える |
出典:日本プロサッカーリーグ「2026/27シーズン 明治安田Jリーグの開催期間を決定」「2026/27明治安田Jリーグ(第1節~第38節)対戦カード決定」、愛知県「B.LEAGUEに所属する県内4チームが2026-27シーズンの開幕に向けて知事を表敬訪問します」(2026年8月14日発表)をもとに Human Soar 作成
Jリーグは2025年10月28日に開催期間を発表し、2026年6月16日に第1節から第38節までの対戦カードを発表しました。J1は8月7日に開幕し、12月19日の第20節で年内を終え、2027年2月13日に再開して6月6日に第38節を迎えます。J2・J3は8月8日に開幕し、12月13日の第22節のあと、2月20日に再開して5月23日に最終節を迎えます。
Bリーグは2026-27シーズンから最上位がB.PREMIERとなり、愛知県の発表によるとB.PREMIERのレギュラーシーズンは2026年9月22日から2027年5月2日まで、B.ONEは同じ日から2027年4月26日までです。プレーオフは2027年5月上旬から下旬の予定とされています。協賛先が別のリーグや競技でも、公式の日程が出たらすぐに計画表の左の列を埋めるのが最初の作業です。
注意したいのは、会計年度とのずれです。4月始まりの会計年度の企業では、8月に始まって翌年6月に終わるシーズンが2つの年度にまたがります。協賛金や観戦・招待の費用をどちらの年度で計上するかは、契約直後に経理と決めておきます。協賛金の科目の考え方はスポンサー料の勘定科目で解説しています。
(参考)2026/27シーズン 明治安田Jリーグの開催期間を決定 – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ
(参考)2026/27明治安田Jリーグ(第1節~第38節)対戦カード決定 – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ
(参考)B.LEAGUEに所属する県内4チームが2026-27シーズンの開幕に向けて知事を表敬訪問します – 愛知県スポーツ局スポーツ振興課
Q. Jリーグの秋春制で協賛の年間計画はどう変わりますか?
試合の期間が8月から翌年の5〜6月になり、4月始まりの会計年度の企業では1つのシーズンが2つの年度にまたがります。協賛金と活用費をどちらの年度で計上するかを先に経理と決め、12月から2月のウインターブレークを振り返りと翌年度予算の相談に使うと計画が立てやすくなります。
契約直後から開幕前にスポーツ協賛の準備を済ませる
開幕してから準備を始めると、最初の数試合は権利を使えないまま過ぎていきます。契約直後から開幕前までに、権利の整理、社内の体制、クラブとの確認、始める前の数字取りを終わらせておきます。
権利を一覧にして使う日を決める
クラブから届いた権利を、看板やユニフォームのような露出の権利と、招待席や冠試合のような使う権利に分けて表にします。使う権利には回数と使える期間を書き添え、試合の日程と見比べて、いつ使うかの候補日を入れます。冠試合のように日付を選べる権利は、取引先の決算期や自社の繁忙期と重ならない日を選びます。
権利の中身や、使えなかった場合の扱いは契約書に書かれています。確認する項目はスポーツスポンサー契約とはにまとめています。
社内の窓口と予算の配分を決める
協賛の窓口は1人に決め、社員観戦は人事や総務、取引先招待は営業、SNSは広報というように、施策ごとの担当部署を決めます。予算は協賛金とは別に、観戦の交通費、招待の飲食費、制作物の費用などの活用費を見込んでおきます。活用費がゼロのままだと、権利を持っていても使えません。
素材の使い方をクラブと確かめる
SNSや社内報でクラブのロゴ、試合の写真、選手の写真を使えるかどうかは、契約や使用の決まりによって違います。使える素材の範囲、クラブの確認が要る投稿、確認にかかる日数を開幕前に聞いておきます。確認に数日かかる場合は、試合の前日に投稿しようとしても間に合いません。
始める前の数字を取っておく
協賛の効果を後で示すには、始める前の数字が要ります。社名を知っている人の割合、SNSのフォロワー数、採用の応募数など、協賛の目的に合う数字を開幕前に記録しておきます。始める前と後の数字を同じ聞き方で比べる方法はスポーツ協賛のブランドリフト調査で説明しています。
シーズン中は社員観戦・取引先招待・SNS発信を試合に重ねる

シーズン中の施策は、試合の日程に重ねて配置します。SNSでの発信は試合のたびに続け、社員観戦は開幕直後と年明けの再開後の2回、取引先招待は秋から年末に置きます。ウインターブレークに上期を振り返り、4月から6月にかけて更新の判断を進めます。
社員観戦は開幕直後と再開後に1回ずつ開く
社員観戦は年に1回だけだと、参加できなかった社員にとっては関係のない協賛になってしまいます。開幕直後の8月から10月に1回、年明けの再開後の2月から4月に1回というように、間を空けて2回開くと参加の機会が広がります。4月の回は新入社員を招く場にすると、入社直後に会社の取り組みを知ってもらえます。
家族の同伴を認めるか、観戦の当日に誰が案内するかも決めておきます。観戦を研修に組み込む方法もあります。
あわせて読みたいスポーツ観戦を企業研修に活用|2026年版・効果と導入手順を解説›
社内報は観戦の翌月号に載せる
社内報には、観戦に参加した社員の声と写真を、観戦の翌月の号に載せます。参加しなかった社員にも協賛を知ってもらう手段になり、次の観戦の参加者を集める告知にもなります。写真に他の観客や選手が写る場合は、開幕前にクラブと確かめた使用の決まりに沿って載せます。
社内報の記事は、そのまま年間の記録にもなります。誰が何人参加し、どんな声があったかを残しておけば、更新判断の資料に使えます。
取引先招待は商談の時期に合わせて席を押さえる
取引先の招待は、年末のあいさつや期末の商談など、もともと会う予定がある時期に合わせると効果が出やすくなります。招待する相手の一覧を営業と作り、試合の1か月前には案内を送れるよう、席を早めに押さえます。観戦専用の席や食事を組み合わせた招待の形は、スポーツホスピタリティとはで紹介しています。
費用の扱いにも注意が要ります。取引先を接待する費用は、税務上は交際費等として扱われることがあります。国税庁によると、交際費等は原則として全額が損金に算入されませんが、期末の資本金が1億円以下などの法人は、年800万円の定額控除限度額を超える部分だけを損金不算入とする計算か、接待飲食費の50%を超える部分を損金不算入とする計算かのいずれかで計算できます。また、飲食費を参加者の数で割った額が10,000円以下の費用は、日付や参加者などを書いた書類を保存していれば交際費等から除かれます(令和6年3月31日以前に支出したものは5,000円以下)。個別の扱いは顧問の税理士に確認してください。
年間シートを法人で契約している場合の考え方は年間シートは経費になる?で詳しく説明しています。
(参考)No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算 – 国税庁
SNSの発信は試合の前と当日と後に分けて段取りする
SNSの発信は、1つの試合について試合の前、当日、試合の後の3回を基本の段取りにします。前日までに観戦や冠試合の告知を出し、当日は会場の様子を、試合の後は結果へのお祝いやお礼を投稿します。クラブの投稿を共有するだけでなく、自社の社員や商品が関わった場面を入れると、協賛している理由が伝わります。投稿の作り方はスポーツクラブSNS運用に学ぶファン獲得の3事例も参考になります。
社員に個人のアカウントでの投稿を頼むときは注意が要ります。消費者庁は、令和5年10月1日から広告であることが分からない広告(ステルスマーケティング)を景品表示法の違反としており、企業が第三者に依頼・指示した投稿も広告に含まれるとしています。社員への依頼がどこまで当たるかは状況によるため、頼む場合は広告であることが分かる表示を付けるか、投稿は任意にとどめるかを社内で決め、迷うときは専門家に確認します。
(参考)令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。 – 消費者庁
Q. 取引先を試合に招く費用はどう扱われますか?
取引先を接待するための費用は、税務上は交際費等として扱われることがあります。資本金1億円以下などの法人には年800万円までの定額控除限度額があり、試合後の会食は1人当たり10,000円以下などの条件を満たせば交際費等から除かれます。個別の扱いは顧問の税理士に確認してください。
スポーツ協賛の記録は時期ごとに残して更新判断に使う
協賛を続けるかどうかは、1年分の記録で決まります。シーズンが終わってから思い出して書くのではなく、時期ごとに記録を残しておくと、更新判断の資料がほぼできあがった状態で期限を迎えられます。
シーズン中は施策ごとに1行で残す
施策を実施したら、日付、施策の名前、使った権利、参加した人数、かかった費用、反応を1行で記録します。社員観戦なら参加人数とアンケートの声、取引先招待なら招いた社数とその後の商談の有無、SNSなら投稿ごとの閲覧数や反応数です。月末に1か月分をまとめておけば、記録の抜けに早く気づけます。
配る予定だった数と実際に起きた結果は分けて書きます。たとえば招待券の枚数ではなく、実際に来場した人数を記録します。
オフに上期を振り返り下期を見直す
ウインターブレークの期間は、上期の記録を見直すのに向いています。使い残した権利、参加の少なかった施策、反応のよかった投稿を洗い出し、下期の計画を組み直します。翌年度の予算を社内で相談する時期とも重なるので、上期の数字をそのまま予算の説明に使えます。
あわせて読みたいスポンサー契約の効果測定ガイド|指標と手法›
更新判断は契約の期限から逆算する
更新の連絡期限は契約書で確かめ、その2〜3か月前から年間の報告をまとめ始めます。報告には、開幕前に取った数字と現在の数字、施策ごとの記録、使い残した権利、翌年に変えたい点を入れます。続けるか、権利の組み合わせを変えるか、やめるかを、記録をもとに決めます。
社内の決裁に出す書類の書き方はスポーツ協賛の稟議書の書き方、効果を示す指標の選び方はスポーツスポンサーシップの効果測定方法にまとめています。
Q. 協賛を続けるかどうかの判断はいつから準備すればよいですか?
契約書で更新の連絡期限を確かめ、その2〜3か月前から年間の記録をまとめ始めます。期限がシーズンの終わりより前に来ることもあるため、最終節を待たずに上期の振り返りと下期の途中経過で判断できる形にしておくと慌てずに済みます。
スポーツスポンサーの活用と年間計画のまとめ
スポーツスポンサーの活用は、権利を年間計画表に割り振り、試合の日程に合わせて施策を回し、時期ごとに記録を残す作業です。日付などの出典は本文の各セクションに記載しています。協賛を含むスポーツを使った販促の全体像はスポーツマーケティングとはで解説しています。
- 1年を契約直後・開幕前・シーズン中・オフ・更新判断の5つの時期に分ける
- 計画表の左にリーグの公式日程、右に担当者の作業を並べ、会計年度とのずれを経理と決める
- 開幕前に権利の一覧、社内の担当、素材の使用ルール、始める前の数字をそろえる
- 社員観戦は2回、社内報は翌月号、取引先招待は商談の時期、SNSは試合の前・当日・後に置く
- 施策ごとに1行で記録し、契約の期限から逆算して更新を判断する
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