アスリートクリエイターとは|企業がSNS発信で組むときのルール

アスリートクリエイターとは|企業がSNS発信で組むときのルール スポーツビジネス

自社が協賛するアスリートのSNSのフォロワーが、自社の公式アカウントより多い。この発信力を広報やマーケティングに生かしたいと考えて「アスリート クリエイター」と検索すると、大学の奨学金の情報と、発信するアスリートの話が混ざって出てくる。どこから手をつけるべきか迷っている担当者も多いのではないでしょうか。

アスリートクリエイターとは、競技の外でも自分で情報を発信し、ファンや企業とつながるアスリートのことで、企業が組むときはルール40やステルスマーケティング規制などのルールを先に確かめる必要があります。なお「アスリート クリエイター 奨学金」で探されているのは、立命館大学の「アスリート・クリエーター育成奨学金」で、こちらの「クリエーター」は文化・芸術・研究の分野の学生を指します。この記事では、2つの意味の違い、企業がアスリートと組む形、発信を使うときのルールを順に整理します。

アスリートクリエイターとは|発信するアスリートと奨学金の2つの意味

「アスリートクリエイター」という言葉は、発信者としてのアスリートを指す場合と、立命館大学の奨学金の名前を指す場合の2通りで使われています。企業が関わるのは前者で、後者は学生向けの制度です。

意味 中身 主に調べる人 企業との関わり・金額
発信するアスリート 競技の外でもSNSや動画で自分から情報を届けるアスリート 企業の広報・マーケティング担当 協賛・採用・共同での発信
立命館大学の奨学金 「アスリート・クリエーター育成奨学金」の略。スポーツ、文化・芸術、研究の分野の学部生が対象 学生・保護者 S奨学金年額100万円・A奨学金年額50万円

出典:立命館大学「奨学金・助成金制度(課外活動)」をもとに作成。発信するアスリートの行は本記事の整理

発信者としてのアスリートは動画とSNSで直接ファンに届く

発信者としてのアスリートは、YouTubeやInstagramなどで、自分の練習や生活、考えを直接ファンに届けます。総務省情報通信政策研究所が2026年6月26日に公表した令和7年度の調査では、全年代の利用率はYouTubeが81.5%、Instagramが54.8%、X(旧Twitter)が44.7%、TikTokが36.7%でした。

こうした個人の発信がつくる市場は「クリエイターエコノミー」と呼ばれます。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの推計では、2024年の国内市場規模は2兆894億円で、企業がマーケティングとして払う広告費や出演料も含まれています(民間の推計で、アスリートの分野の内訳は示されていません)。

(参考)「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」の公表 – 総務省情報通信政策研究所

(参考)国内クリエイターエコノミーに関する調査結果(2025年) – 三菱UFJリサーチ&コンサルティング

立命館大学の「アスリート・クリエーター育成奨学金」は学生向けの給付型

立命館大学の「アスリート・クリエーター育成奨学金」は、スポーツ、文化・芸術、研究の分野で世界・日本のトップを目指す学部生を支援する給付型の奨学金です。世界のトップを目指すS奨学金は年額100万円、日本や学生界のトップを目指すA奨学金は年額50万円で、2025年度はS奨学金2名、A奨学金36名が採用されました。

募集は毎年春から初夏にかけて行われ、2026年度は2026年5月11日〜6月7日に受け付けて終了しています。プロ選手の活動などで恒常的な収入がある学生は出願できません。次年度に出願を考えている場合は、大学のスポーツ強化オフィスの発表を確認してください。

(参考)奨学金・助成金制度(課外活動) – 立命館大学

(参考)(受付終了)2026年度「アスリート・クリエーター育成奨学金」募集について – 立命館大学

Q. アスリート・クリエーター育成奨学金とは何ですか?

立命館大学が学部生向けに設けている給付型の奨学金です。スポーツ、文化・芸術、研究の分野で世界・日本のトップを目指す学生を支援し、S奨学金は年額100万円、A奨学金は年額50万円です。ここでいう「クリエーター」は文化・芸術・研究の分野の学生を指し、SNSで発信する人という意味ではありません。

企業がアスリートクリエイターと組む3つの形

企業がアスリートクリエイターと組む関係の図解。スポンサー企業・雇用する企業・ファンとアスリートが渡し合うもの

企業がアスリートクリエイターと組む形は、発信を依頼する、社員として採用する、一緒に発信するの3つに分けられます(本記事の整理)。どの形でも、企業は資金や環境を渡し、アスリートの発信や存在がもたらす認知やイメージを受け取る関係になります。

PR投稿を依頼する|広告の表示は企業が管理する

協賛しているアスリートに、自社の商品やサービスの投稿を依頼する形です。消費者庁によると、2023年10月1日から、広告であることを隠すステルスマーケティングは景品表示法違反になりました。企業が第三者に依頼した投稿も広告に含まれます。

消費者庁は、企業から依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象にならないとしています。つまり、表示の責任を負うのは依頼した企業です。依頼文に「広告」「PR」などの表示方法を書き込み、投稿前に確かめる流れを決めておきます。

(参考)令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。 – 消費者庁

アスリートを社員として採用する|JOCのアスナビで約230社が採用

アスリートを社員として雇い、競技と仕事を両立してもらう形です。日本オリンピック委員会(JOC)の就職支援制度「アスナビ」では、2024年3月時点で約230社が400名近くのアスリートを採用しています。

JOCが2026年に公表した「アスリート採用企業の意識調査」では、採用企業の総合的な満足度は83.6%で、「企業イメージの向上」の達成度も83.6%でした(回答68社)。社員アスリートの発信は、採用広報や社内の一体感にもつながります。雇う前に決めておく労務と税の扱いはアスリート社員の労務と税の扱いで解説しています。

あわせて読みたいアスリート採用で企業が得るメリット|JOCアスナビ事例›

(参考)アスナビ──現役アスリートの就職支援 – 日本オリンピック委員会

(参考)アスリート採用企業の意識調査2026 – 日本オリンピック委員会

一緒に発信する|素材と承認の流れを契約で決める

企業の公式アカウントとアスリートが、同じ企画を一緒に発信する形です。誰が写真や動画を撮り、誰が確認して、どこに載せるかを先に決めておかないと、投稿のたびに確認が滞ります。

協賛企業がSNSで発信するときの素材と承認の決め方は、別の記事で詳しく扱っています。スポーツ業界全体の課題の中で発信をどう位置づけるかは日本スポーツ業界の8つの課題、マーケティング全体の考え方はスポーツマーケティングの定義と事例が参考になります。

あわせて読みたいスポンサーのSNS発信|スポーツ協賛企業が確かめる素材と承認›

Q. 企業がアスリートにSNSでのPR投稿を頼むときの注意点は何ですか?

広告であることを分かるように表示し、その管理を企業が行うことです。2023年10月1日から、広告であることを隠すステルスマーケティングは景品表示法違反になり、規制の対象は広告主である企業です。依頼を受けたアスリートなど第三者は規制の対象にならないため、表示の責任は依頼した企業にあります。

アスリートの発信を企業が使うときのルール|ルール40と誹謗中傷への備え

ルール40の適用期間とアスリートの肖像の使い方の図解。パリ2024大会の例

アスリートの発信を企業が使うときは、オリンピックなどの大会期間中の肖像の使い方と、発信が炎上したときの備えを先に確かめます。とくにオリンピック期間中は、契約しているアスリートであっても自由に使えるわけではありません。

ルール40で大会期間中の肖像の商業利用が制限される

オリンピック憲章の規則40付属細則3(いわゆるルール40)により、大会に参加する選手の肖像の商業利用は、選手村の開村日から閉会式の2日後まで制限されます。JOCのパリ2024大会のガイドラインでは、適用期間は2024年7月18日〜8月13日でした。

この期間に選手の肖像を使えるのは、オリンピックのパートナーと、確認書を提出した個人スポンサー等だけです。個人スポンサー等も、適用期間の90日前より前から使っている広告素材に限られます。選手は個人スポンサーへの感謝メッセージを条件付きで投稿できますが、個人スポンサー等はそれをリポスト・シェアできません。条件は大会ごとに定められるため、次の大会のガイドラインを必ず確かめてください。

(参考)第33回オリンピック競技大会(2024/パリ)TEAM JAPAN選手等の肖像使用に関するガイドライン – 日本オリンピック委員会

誹謗中傷への備えを契約の段階で決めておく

発信が注目を集めるほど、攻撃的なコメントも集まりやすくなります。JOCと日本パラリンピック委員会が2026年3月31日に発行した報告書によると、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックの期間中、弁護士の確認を経た削除要請は1,913件で、実際に削除されたのは578件(30.2%)でした。

報告書は、高い反応を得た投稿のコメント欄に攻撃的な反応が集まりやすいと分析しています。アスリートと一緒に発信する企業は、中傷や炎上が起きたときに誰がどう対応するかを、契約の段階で決めておくと安心です。

(参考)アスリート等に対する誹謗中傷対策事業に関する報告書 – 日本オリンピック委員会・日本パラリンピック委員会

Q. オリンピック期間中に契約選手の投稿をリポストできますか?

パリ2024大会の例では、できませんでした。日本オリンピック委員会のガイドラインは、選手が個人スポンサーへの感謝メッセージを投稿することは条件付きで認める一方、個人スポンサー等がそれをリポスト・シェアすることはできないとしています。条件は大会ごとに定められるため、次の大会のガイドラインを必ず確認してください。

まとめ|アスリートクリエイターと組む前にルールを確かめる

アスリートクリエイターと組むと、企業だけでは届かない人に情報を届けられますが、組む前に確かめるルールがあります。この記事の要点を振り返ります。

  • アスリートクリエイターには、発信するアスリートと、立命館大学の奨学金の名前という2つの意味がある
  • 企業が組む形は、PR投稿の依頼・社員としての採用・共同の発信の3つ
  • ステルスマーケティング規制の対象は広告主である企業で、表示の管理は企業の責任
  • オリンピック期間中はルール40で肖像の使い方が制限され、パリ2024では感謝投稿のリポストもできなかった
  • 誹謗中傷や炎上への対応は、契約の段階で決めておく

まずは協賛や契約をしているアスリートとの間で、PR投稿の表示方法と確認の流れを文書にしておくところから始めてみてください。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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