スポーツ協賛の報告書の書き方|スポンサー企業の社内報告の構成例

スポーツ協賛の報告書の書き方|スポンサー企業の社内報告の構成例 スポーツマーケティング

スポーツ協賛の社内報告書は、1枚目に結論と判断してほしい事項を置き、そのあとを「目的→費用→実施した内容→結果→評価→次年度の提案」の順に並べると、経営層が読み進めやすくなります。結果の数字は予定と実績、前年と並べて示し、効果が出なかったときは原因がどこで止まったかを分けて次の手を書きます。クラブやチームから受け取る実施報告は、何をいつまでに出してもらうかを契約のときに決めておくのが近道です。

シーズンが終わり、看板の写真や来場者数の資料がクラブから届いた。けれど、それを並べただけでは役員会で「で、来年も続けるの?」と聞かれたときに答えられない。ここでは、届いた資料を判断に使える報告書へまとめる手順を、章立ての例、数字の載せ方、うまくいかなかった年の書き方まで順に整理します。効果を測る方法そのものはスポーツスポンサーシップの効果測定の方法で解説しているので、ここでは測った数字をどう報告するかに絞ります。

スポーツ協賛の報告書の構成例|要約から次年度の提案まで

報告書の章は、読む人が知りたい順に並べます。経営層がまず知りたいのは「続けるのか、いくらか」なので、その答えを最初に置き、根拠となる数字を後ろに積み上げる形にします。章立ての例は次のとおりです。

章 載せる中身 経営層が知りたいこと
要約 結論と、判断してほしい事項 続けるのか、いくら出すのか
目的と目標 協賛の目的、目標の数字、届けたい相手 何のための出費なのか
契約と費用 協賛金、活用費、受け取った権利の一覧 総額はいくらだったのか
実施した内容 使った権利、行った施策、日程 権利を使い切ったのか
結果 露出、反応、態度の変化、事業の成果の数字 目標に届いたのか
評価と原因 目標との差と、その理由 なぜその結果になったのか
次年度の提案 続ける・変える・やめるの案と金額 何を決めればよいのか

Human Soar 作成。結果の章の並び(露出→反応→態度の変化→事業の成果)は、AMEC「Integrated Evaluation Framework」の段階をもとにしている

1枚目の要約に結論と判断事項を書く

要約には、目標に届いたかどうか、その理由をひとことで、そして判断してほしい事項を書きます。判断事項は「来年度も同じ金額で更新してよいか」「招待席の枠を減らし、活用費に回してよいか」のように、はい・いいえで答えられる形にしておくと、会議の時間が短くなります。

写真や試合ごとの明細は、要約には入れません。後ろの章や別添にまとめておけば、詳しく知りたい人だけが読めます。

結果の章は露出から事業の成果へ順に並べる

結果の数字は、手前の段階から順に並べると因果の流れが追いやすくなります。広報・コミュニケーションの効果測定の国際団体AMECは、評価の枠組みを目的、投入、活動、露出などの成果物、受け手の反応、受け手の変化、組織への影響の7つの段階で示しています。協賛でいえば、看板が映った、見た人が反応した、社名を覚えてもらえた、商談が増えた、という流れです。

この順で並べておくと、どこで数字が伸びなかったのかも見えるようになります。露出は十分なのに好感が動いていないなら、届け方の問題だと読み取れるわけですね。

(参考)AMEC Integrated Evaluation Framework – AMEC

費用は協賛金と活用費を合わせて書く

費用の章には、クラブに払った協賛金だけでなく、ブースの設営や招待のための交通費など、権利を使うためにかかった活用費も書きます。協賛金だけを載せると、実際にかかった総額が分からず、次年度の予算を組むときに不足が出ます。活用費の考え方はスポンサーシップ アクティベーションの解説にまとめています。

Q. スポンサーの社内報告書は何ページにまとめればよいですか?

決まった枚数はありませんが、1枚目の要約だけで判断できる形にするのが基本です。要約に結論と判断してほしい事項を書き、数字の明細や写真は後ろの章や別添に回します。読む人が要約で止まっても、続けるか・いくらかが分かることを優先します。

報告書に載せる数字と載せ方|予定と実績を同じ表で見せる

報告書の数字は、集め方と見せ方を種類ごとに決めておくと、毎年同じ形で比べられます。種類ごとの例と載せ方、誰から受け取るかを表にまとめました。

数字の種類 例 載せ方 誰から受け取るか
露出 看板を出した試合の数、中継に映った秒数 予定と実績を並べる クラブ・調査会社
権利の使用 招待券を使った枚数、冠試合の回数 受け取った数のうち使った割合 自社の記録
接した人の反応 来場者数、SNSの閲覧数、ブースに来た人数 何を数えたかと集計期間を書く クラブ・自社
態度の変化 社名の想起、認知、好感 接した人と接していない人の差 調査会社・クラブの観戦者調査
事業の成果 商談の数、採用の応募数、売上 協賛から来たと分かるものだけ数える 自社の営業・人事
費用 協賛金、活用費、社内の人手 1人・1件あたりに割って示す 経理・自社の記録

Human Soar 作成

予定と実績と前年を同じ表に並べる

数字は、契約時に約束された予定、実際の結果、前年の結果の3つを横に並べます。「看板を出した試合 予定20試合・実績18試合」のように並べれば、権利がきちんと実施されたかが一目で分かります。前年と比べるときは、数え方の定義を変えないことが前提です。

割り算した数字には、何を何で割ったかを書きます。たとえば協賛金500万円で取引先50社を招待したなら、1社あたり10万円です(数値は説明のための例)。分母を書いておけば、ほかの販促と同じ物差しで比べられます。

広告換算値は参考の数字として別に置く

露出を広告の料金に置き換えた広告換算値は、金額で示せるので報告書に載せたくなる数字です。ただしAMECは、広告換算値を広報の効果の指標として使うのをやめるよう呼びかける「Say No to AVEs」の取り組みを始めています。載せる場合は、成果の章ではなく参考の数字として別に置き、計算の前提を書いておきます。計算の方法と注意点はスポーツ協賛の広告換算値で解説しています。

あわせて読みたいスポンサー契約の効果測定ガイド|指標と手法›

(参考)Say No to AVEs – AMEC

招待券は誰に使ったかまで残す

招待券や観戦席の権利は、使った枚数だけでなく、誰を招いたかも記録しておきます。取引先を招いたのか、社員を招いたのかで、報告書で示す成果も経理での扱いも変わるためです。

国税庁は、得意先や仕入先など事業に関係のある人への接待・贈答などのための費用を交際費等としています。期末の資本金が1億円以下の法人などは、年800万円までの定額控除などの扱いがあります。どの科目になるかは見返りの中身で変わるので、スポンサー料の勘定科目も参考にしながら、経理や税理士に確認してください。

(参考)No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算 – 国税庁

協賛の効果が出なかった年の報告書の書き方

スポーツ協賛の効果が目標に届かなかったとき、原因(権利が未使用・施策が届かない・目的と合わない)ごとに報告書に書く次の手を分けた図

効果が目標に届かなかった年こそ、報告書の書き方で次の判断が変わります。数字をぼかしたり、良かった数字だけを並べたりすると、翌年の報告まで信用されにくくなります。届かなかった事実を先に書き、原因を分け、原因ごとの次の手を示すのが基本です。

目標との差を数字のまま書く

「一定の効果があった」のようなあいまいな表現は避け、「招待した取引先からの商談 目標30件・実績12件」のように、目標と実績をそのまま並べます。届かなかった理由を説明する前に、まず差の大きさを共有することが大切です。

あわせて、目標に届いた数字があれば同じ表に並べます。露出は予定どおりだったが商談につながらなかった、のように、どこまで進んだかが分かると原因を探しやすくなります。

原因はどこで止まったかで分ける

原因は、どこで止まったかで3つに分けると整理しやすくなります。1つ目は、権利が使われていない場合です。招待券が余った、冠試合の企画が間に合わなかった、などがこれにあたります。2つ目は、施策は行ったが狙った相手に届いていない場合で、来場者の年代が想定と違った、などです。3つ目は、そもそも協賛の目的と受け取った権利が合っていない場合です。採用を目的にしたのに、看板の露出しか権利がない、などが典型です。

原因によって打つ手が変わります。1つ目なら使う計画を立て直し、2つ目なら施策や届ける相手を変え、3つ目なら権利の中身を組み替えるか、規模を見直します。

続ける・変える・やめるの案を並べる

原因を書いたら、次年度の案を複数並べます。「同じ条件で続ける」「権利を入れ替えて続ける」「金額を下げる」「更新しない」のように選択肢を示し、それぞれの金額と、選んだ場合に何が変わるかを書きます。担当者としてどれを勧めるかも、理由とあわせて書いておきます。

更新しない案を選ぶ場合も、地域とのつながりや社員の参加など、続けた場合に残る価値を書き添えておくと、判断する人が見落としを防げます。

Q. 協賛の効果が出なかったとき、報告書にはどう書けばよいですか?

目標と実績の差を数字のまま書き、原因と次の手を並べて書きます。原因は、権利を使い切れていない、施策が狙った相手に届いていない、目的と権利が合っていない、のどこで止まったかで分けます。原因ごとに打つ手が違うので、続ける・変える・やめるの案を金額つきで示します。

次年度の提案につなげる書き方|判断事項を1つに絞る

報告書の最後の章は、振り返りではなく次年度の提案です。結果の章で示した数字を根拠に、何を決めてほしいのかを1つに絞って書きます。

権利ごとに続ける・増やす・減らすを書く

提案は、協賛全体ではなく権利ごとに書きます。看板は認知の数字が伸びたので続ける、招待席は商談につながったので枠を増やす、使わなかった権利は外して金額を下げる交渉をする、のように、結果の章の数字と1対1で結びつけます。

権利ごとに書いておけば、全体を続けるかやめるかの二択にならず、中身を組み替える選択肢が生まれます。

更新の話し合いの材料として数字を持つ

クラブ側の協賛収入は伸びています。Jリーグの2025年度クラブ経営情報開示資料(2026年5月26日公表、7月24日更新)では、先行開示の53クラブのスポンサー収入の合計が782億5,100万円で、前年度の732億1,000万円(58クラブ)を上回りました。前年と比べられるJ1クラブのうち、スポンサー収入が増えたのは16クラブ(94%)です。

合計はクラブ数が違うので、1クラブあたりに割って比べると、2023年度は約11億4,300万円(58クラブ)、2024年度は約12億6,200万円(58クラブ)、2025年度は約14億7,600万円(53クラブ)です。2025年度は3月決算・6月決算の7クラブを含まないため、目安として見てください。

更新の場で条件を話し合うとき、権利ごとの実績を自社で持っているかどうかで、話の進め方が変わります。使わなかった権利を外したい、成果の出た権利を増やしたい、という要望は、報告書の数字があって初めて具体的に伝えられます。

(参考)2025年度 クラブ経営情報開示資料(2026年5月26日・7月24日更新) – 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ

稟議書にそのまま使える形で書く

次年度の提案は、そのまま翌年の稟議書の根拠になります。目的、金額、権利、効果の測り方、見直しの基準といった稟議書の項目に合わせて提案を書いておけば、報告から稟議までの作業が一度で済みます。

あわせて読みたいスポーツ協賛の稟議書の書き方|担当者が書く8項目と例文›

Q. 協賛の報告書はいつ作ればよいですか?

契約を更新するかどうかを決める期限から逆算して作ります。クラブとの更新の話し合いはシーズンが終わる前に始まることもあるので、契約書で更新の期限を確かめ、そこに間に合う時点の数字でまとめます。シーズンの最後まで待つと、判断に使えないことがあります。

クラブやチームから受け取る実施報告で求める項目

スポーツ協賛でクラブから受け取る実施報告の流れ(契約時に項目を決める、シーズン中に確認、シーズン後に受け取る、更新前に社内報告)を示した図

社内報告書の数字の多くは、クラブやチームから届く実施報告がもとになります。届いてから足りない数字に気づいても、さかのぼって集めるのは難しいため、何をいつまでに出してもらうかを契約のときに決めておきます。シーズン中にも途中の数字を確認しておけば、権利の使い残しにも早く気づけます。

実施の証拠は日付と写真で受け取る

看板の掲出やビジョンでの社名表示など、契約した権利が実施されたことは、試合の日付と写真で受け取ります。中継に映った秒数のように数える必要がある数字は、誰がどう数えたかもあわせて書いてもらいます。報告の項目や期限を契約書に書き込む方法は、契約全体の確認点とあわせて下の記事で解説しています。

あわせて読みたいスポーツスポンサー契約とは|企業が確かめる6項目と印紙・法律›

人数の数字は定義と集計期間を付けてもらう

来場者数やSNSの閲覧数は、何を数えたか、いつからいつまでの数字かで大きく変わります。数字だけを受け取らず、定義と集計期間を必ず付けてもらいます。

来場者の声を集める仕組みを持つリーグもあります。Jリーグは2025シーズン、開幕期、ゴールデンウィーク期、夏休み期、終盤期の計4回にわたって観戦者調査を行い、延べ191,686人が回答しました。その結果は、J1・J2・J3の全60クラブを対象にしたレポートとして公開されています。こうした調査に自社の設問を足せないかクラブに相談すると、社名の認知や好感の変化を報告書に載せやすくなります。設問の作り方はスポーツ協賛のブランドリフト調査で解説しています。

(参考)Jリーグが提供する2025シーズン観戦者調査レポート(2026年7月) – KPMGコンサルティング株式会社

来場者の情報は個人が分からない集計値で受け取る

アンケートや抽選で集めた来場者の名前や連絡先を、クラブからそのまま受け取るのは避けます。個人情報保護法の第27条は、本人の同意なく個人データを第三者に渡すことを原則として制限しているためです。報告書に必要なのは年代別の人数や回答の割合などの集計値なので、その形で出してもらいます。

自社の営業に使える連絡先がほしい場合は、ブースでの名刺交換や自社のフォームなど、自社で同意を取って集める方法を施策に組み込みます。扱いに迷うときは、法務の担当者や専門家に確認してください。

(参考)個人情報の保護に関する法律 – e-Gov法令検索

Q. スポンサーとしてクラブにはどんな報告を求めればよいですか?

権利を実施した証拠、人数などの数字とその定義、来場者の調査結果の3つを求めます。証拠は日付と写真、人数は何を数えたかと集計期間、来場者の情報は個人が分からない集計値で受け取ります。報告の項目と期限は、契約を結ぶときに決めておくと受け取りやすくなります。

スポーツ協賛の報告書の書き方のまとめ

協賛の報告書は、集めた資料を並べる場ではなく、次年度の判断を引き出すための資料です。スポーツを使った販促の全体像はスポーツマーケティングの定義と事例にまとめています。

  • 1枚目に結論と判断してほしい事項を書き、目的・費用・実施・結果・評価・提案の順に並べる
  • 結果は露出から事業の成果へ順に並べ、予定・実績・前年を同じ表で示す
  • 効果が出なかった年は差を数字のまま書き、原因を3つに分けて次の手を示す
  • 次年度の提案は権利ごとに書き、更新の話し合いと稟議書の材料にする
  • クラブからの実施報告は、項目と期限を契約時に決め、来場者の情報は集計値で受け取る

元気な社員が、いちばんのマーケティングになる。

社員のウェルビーイングを高め、
その元気が自然と外に伝わる仕組みをつくります。

インナーマーケティングを知る →

About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

コメント

タイトルとURLをコピーしました