NFLのスポンサーには、リーグと契約する公式スポンサー、各チームと契約するスポンサー、試合を中継する放送局から広告枠を買う企業の3つの立場があります。NFLのマークを広告に使う権利はリーグとの契約で得るもので、試合のユニフォームに表示できるロゴもリーグの公式パートナーのものに限られます。スーパーボウルのCMは放送局から買うもので、スポンサー契約とは相手が別です。日本企業ではトヨタとソニーがリーグの、日産がテネシー・タイタンズのスポンサーとして公式に発表されています。
米国で事業を広げたい、現地の取引先との関係をつくりたいという理由で、NFLの名前が社内の会議に出てくることがあります。ところが「スーパーボウルに出ている会社」と「NFLのスポンサー」は同じではなく、どこに相談すればよいかも分かりにくいものです。ここでは公式に発表された資料をもとに、NFLのスポンサーの仕組みと、日本企業が関わるときに確かめることを整理します。
NFLのスポンサーはリーグとチームと放送局の3つの窓口に分かれる

NFLと組みたいと考えたときは、まず何を得たいかで相談先が決まります。NFLのマークやリーグ全体の催しを使いたいならリーグ、スタジアムや地元のファンに届けたいならチーム、試合の中継で多くの人に届けたいなら放送局が相手です。スポンサーの種類全体の考え方はスポーツスポンサーとは何かを解説した記事にまとめています。
リーグの公式スポンサー|NFLのマークと全国の催しを使う
リーグの公式スポンサーは、NFLと契約して「NFLの公式◯◯パートナー」といった呼び名を得ます。たとえばトヨタは「NFLの公式自動車パートナー」と紹介されています。NFLが2024年6月11日に出した発表では、トヨタがNFLフラッグ(体がぶつからない形のフラッグフットボールの公式プログラム)の大会の冠スポンサーになったことが伝えられました。
この契約でトヨタは、地域と全国の大会でフラッグの選手が着るジャージに共同のブランドで表示され、会場の看板やフラッグのベルトにも名前が入ります。米国にあるトヨタの1,200の販売店が、1,800を超える地域のリーグと組む仕組みも発表されました。トヨタの例のように、リーグの公式スポンサーは試合会場だけでなく、リーグが持つ催しや育成の場まで使える場合があります。
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(参考)Toyota named presenting partner of NFL Flag tournaments across the U.S.(2024年6月11日) – NFL.com
チームのスポンサー|スタジアムと地元のファンに届ける
チームのスポンサーは、32あるチームのどれかと個別に契約します。代表的なのがスタジアムの命名権で、テネシー・タイタンズは2023年11月17日、日産の北米法人と新スタジアムの命名権について20年の契約を結んだと発表しました。
発表では、新スタジアムの中に日産のブランドを体験できる場所や展示を設けること、タイタンズの放送や配信にも関わることが挙げられています。チームと組む契約は、そのチームの本拠地とファンに深く入り込むための手段だといえます。
放送局の広告と番組提供|試合の中継で届ける
試合の中継の中で流れるCMや、番組の提供(スポンサー表示)は、中継する放送局から買います。NBCを運営するNBCユニバーサルは2025年9月3日、2026年2月8日のスーパーボウルLXのCM枠をすべて売り切ったと発表しました。同じ発表で、NFL中継の主な番組スポンサーの枠も売り切れ、ハーフタイムの提供はトヨタだとしています。
トヨタはリーグの公式スポンサーであり、同時に放送局の番組スポンサーでもあります。このように、リーグ、チーム、放送局の契約は別々に結ぶもので、組み合わせて使う企業もあります。
Q. NFLの公式スポンサーとチームのスポンサーは何が違いますか?
契約する相手と、使える権利の範囲が違います。NFLの公式スポンサーはリーグと契約し、NFLのマークやリーグが開く催しを使えます。チームのスポンサーは各チームと契約し、スタジアムの命名権や地元のファンに向けた施策など、そのチームが持つ権利を使います。
NFLのユニフォームに表示できるロゴはリーグの公式パートナーに限られる
NFLの試合のユニフォームは、企業が自由にロゴを入れられる場所ではありません。表示できるのはリーグの公式パートナーのロゴで、チームが独自にユニフォームの広告枠を売る形ではありません。チームが企業と組むときは、練習着のパッチなど、チームが売れる枠を使います。
試合のユニフォーム|選手が使う用具もパートナー以外のロゴは隠す
NFLのフットボール運営部門は、コンプライアンス部門の役割として、ユニフォームが正しく着用されているか、パートナーのロゴが表示されてそれ以外が覆われたり外されたりしているかを確かめると説明しています。選手はどの用具を使ってもよいものの、見えてよいロゴはリーグの公式パートナーのものだけです。各スタジアムには、試合の前にユニフォームの問題を正す元選手2人を配置しています。
ユニフォームそのものは、ナイキがNFLの全32チームに独占的に供給しています。ナイキとNFLは2024年12月11日、2012年から続く契約を2038年まで延長すると発表しました。全32チームのユニフォームが1社の供給でそろっていることからも、ユニフォームの権利をリーグがまとめて扱っていることが分かります。
(参考)Compliance – NFL Football Operations
(参考)NIKE, Inc.とNFLが長年のパートナーシップを2038年まで延長(2024年12月11日) – NIKE, Inc.
練習着のパッチ|2009年に大きさの上限つきで認められた
チームが自分で売れる枠として認められたのが、練習着です。インディアナポリス・コルツの公式サイトによると、NFLのオーナーは2009年3月、縦横3.5インチ×4.5インチ以内のスポンサーのパッチを練習着に付けることを認めました。コルツはその年、地元の保険会社のロゴを練習着のパッチに入れると発表しています。
練習着は試合の中継には映りませんが、練習の公開日や写真、動画でファンの目に触れます。チームのスポンサーを検討するときは、どのユニフォームのどこに入るのかを契約の前に確かめておきます。袖に広告を入れる他のリーグの決まりは袖スポンサーの解説で比べられます。
(参考)Logo Added To Practice Jerseys(2009年7月16日) – Indianapolis Colts
Q. NFLのユニフォームに企業のロゴは入りますか?
試合のユニフォームに表示できるのは、リーグの公式パートナーのロゴに限られます。NFLのコンプライアンス部門は、公式パートナー以外の企業のロゴを隠すか外すよう選手やチームに求めています。練習着には、2009年にオーナーの投票で認められた大きさの範囲で、チームが企業のパッチを入れられるようになりました。
スーパーボウルの広告とスポンサーは買う相手が違う

スーパーボウルで企業の名前を出す方法は、大きく3つあります。放送局からCMの枠を買う方法、放送局から番組の提供枠を買う方法、NFLと契約して公式スポンサーになる方法です。前の2つは放送局との取引で、NFLのマークを使う権利はNFLとの契約で得ます。
CMの枠は放送局が売る|スーパーボウル以外もシーズンを通して買える
スーパーボウルLXはNBC、配信のPeacock、スペイン語放送のTelemundoで中継され、NBCユニバーサルはそのCMの枠を開幕前に売り切ったと発表しました。発表では、日用品、エンターテインメント、金融、酒類が主な出稿の業種だと説明しています。1枠あたりの価格は、この発表では明らかにされていません。
同じ発表によると、スーパーボウル以外のNFL中継の広告枠も90%が売れ、20シーズン目のサンデーナイトフットボールには150を超えるパートナー(広告主)が集まり、そのうち約40社が新しいパートナーでした。中継の広告枠は、スーパーボウルの1試合だけでなくシーズンを通して買える商品です。
スーパーボウルの名称やNFLのマークはNFLとの契約で使う
NFLの公式サイトは、NFLの名称と盾の形のロゴは登録商標であり、チーム名、ロゴ、ユニフォームのデザインは各チームの登録商標、それ以外のNFLに関わる商標はNFLのものだと表示しています。CMの枠を買っただけでは、これらを広告に使える範囲は決まりません。
大会の名前や試合の映像を自社の広告や店頭で使いたい場合は、NFLとの契約で何が使えるかを確かめます。放映権の売り方そのものはスポーツ放映権の仕組みの記事で整理しています。
(参考)Compliance – NFL Football Operations(ページ下部の商標の表示)
Q. スーパーボウルにCMを出せばNFLのスポンサーになれますか?
なれません。CMの枠は中継する放送局から買うもので、NFLとの契約とは別です。スーパーボウルの名称やNFLのマークを広告で使いたい場合は、権利を持つNFLとの契約で使える範囲を確かめます。
NFLのチームの収入はパッカーズの年次報告で分かる|スポンサーは地元収入に含まれる
NFLのスポンサー収入の額を知る手がかりは限られています。その中で、グリーンベイ・パッカーズは株主が持つリーグ唯一のチームとして、毎年、年次の財務報告を公表しています。公式サイトで公表された数字を4年分並べ、増加額から逆算すると、収入の内訳は次のようになります。
| 会計年度 | 収入の合計 | 全国収入(リーグから) | 地元収入(チケット・スポンサーなど) | 全国収入の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 610.3 | 374.4(計算) | 235.9 | 約61% |
| 2024年3月期 | 654 | 402.3(計算) | 約251.7(計算) | 約62% |
| 2025年3月期 | 約718.9(計算) | 432.6(計算) | 約286.3(計算) | 約60% |
| 2026年3月期 | 約752.9(計算) | 453.2 | 約299.7(計算) | 約60% |
単位は百万ドル。会計年度は4月から翌年3月。「計算」は、公表された金額と前年からの増加額をもとに計算した値。出典:Green Bay Packers「Packers report another solid year financially」(2023年)、「Packers’ finances remain on solid ground」(2024年)、「Packers’ finances staying in good shape」(2025年)、「Packers’ finances remain strong amidst changing NFL landscape」(2026年)をもとに Human Soar 作成
2026年3月期の全国収入は過去最高の4億5,320万ドルで、前の年から2,060万ドル(4.8%)増えました。パッカーズは、全国収入の伸びをNFLの放送契約や配信の広がりと結びつけて説明しています。4年とも収入の約6割はリーグから配られる全国収入で、チームが自分で稼ぐ地元収入は約4割です。
スポンサー収入は、この地元収入の中に入っています。2026年の報告は地元収入を「チケット、スポンサー、物販、催し」から成ると説明しており、スポンサーだけの額は出していません。2025年3月期は本拠地での公式戦が9試合あったため地元収入が3,460万ドル(13.7%)増え、2026年3月期は8試合に戻っても1,340万ドル増えました。
チームと契約する企業から見ると、チームの収入の柱はリーグからの分配であり、スポンサー料はチームが自分の力で伸ばせる地元収入の一部だと読めます。リーグの公式スポンサーの料金が全国収入にどれだけ含まれるかは、パッカーズの報告からは分かりません。
(参考)Packers' finances remain strong amidst changing NFL landscape(2026年7月24日) – Green Bay Packers
(参考)Packers' finances staying in good shape(2025年7月23日) – Green Bay Packers
(参考)Packers' finances remain on solid ground(2024年) – Green Bay Packers
(参考)Packers report another solid year financially(2023年) – Green Bay Packers
NFLのスポンサーになった日本企業の一覧|トヨタとソニーと日産
NFLやNFLのチームとの契約を、リーグ、チーム、企業のいずれかが公式に発表されている日本企業の主な例は、次の3社です。いずれも米国の現地法人が契約や発表に加わっており、発表文に契約金額は書かれていません。
| 企業(契約の主体) | 契約の相手 | 立場 | 発表日 |
|---|---|---|---|
| トヨタ(Toyota Motor North America) | NFL(リーグ) | 公式自動車パートナー/NFLフラッグの大会の冠 | 2024年6月11日(フラッグの大会) |
| ソニー(ソニーグループ、Sony Electronics) | NFL(リーグ) | 公式テクノロジーパートナー/公式ヘッドホン | 2024年7月31日 |
| 日産(Nissan North America) | テネシー・タイタンズ(チーム) | 新スタジアムの命名権(20年) | 2023年11月17日 |
出典:NFL.com(2024年6月11日)、ソニーグループ(2024年8月1日、米国では7月31日発表)、Tennessee Titans(2023年11月17日)の発表をもとに Human Soar 作成。トヨタの発表日はフラッグフットボールの大会の契約のもの
トヨタ|リーグの公式自動車パートナーとして育成の場まで使う
トヨタはNFLの公式自動車パートナーで、2024年にはNFLフラッグの大会の冠も加えました。発表の主体は北米のトヨタ(Toyota Motor North America)です。フラッグフットボールのプログラムには70万人を超える子どもが参加しており、トヨタは販売店と地域のリーグを結びつけて、地元の家族との接点をつくっています。
さらにトヨタは、NBCのNFL中継でハーフタイムの提供も務めています。リーグの権利と放送局の枠を組み合わせ、催しと中継の両方で名前を届けている例です。
(参考)Toyota named presenting partner of NFL Flag tournaments across the U.S.(2024年6月11日) – NFL.com
ソニー|公式テクノロジーパートナーとして技術で試合に入る
ソニーは2024年7月31日(日本では8月1日)、NFLの公式テクノロジーパートナーと公式ヘッドホンになったと発表しました。発表はソニーグループと米国のSony Electronicsの連名です。ソニーのHawk-Eye Innovationsの技術で審判を支え、2025年シーズンからはコーチが使うサイドラインの新しいヘッドセットを導入するとしています。
ソニーの契約は、看板で名前を出すより、自社の製品や技術が試合の運営そのものに使われる形です。技術や製品を持つ企業にとっては、こうした組み方も選択肢になります。
(参考)Sony and National Football League Launch New Technology Partnership(2024年8月1日) – ソニーグループ
日産|タイタンズの本拠地の名前を20年持つ
日産は北米法人(Nissan North America)がテネシー・タイタンズと契約し、2015年から本拠地の名前を「Nissan Stadium」としてきました。2023年11月の発表で、2027年に完成予定の新スタジアムでもこの名前を20年使うことが決まりました。
発表によると、日産はテネシー州に車と駆動部品の工場、北米の本社を置き、3か所で1万1,000人を超える人が働いています。日産の米州の責任者は、新スタジアムがブランドと、地元での仕事の機会を示す場になると述べています。工場や本社のある地域のチームと組み、販売だけでなく採用にもつなげている例です。日本の施設の命名権の進め方はネーミングライツ募集の読み方で解説しています。
日本企業がNFLと組む前に確かめる4つのこと
NFLとの契約は米国の制度と商習慣の中で結ぶものなので、国内のクラブと組むときとは確かめることが変わります。検討の段階で社内で決めておきたいのは次の4つです。
権利を使える国|日本でチームの権利を持つのはラムズ
NFLは2022年から、各チームに海外の国ごとのマーケティングの権利を与える制度を設けています。2026年3月30日の発表では、全32チームが参加し、権利が与えられた市場(国)は22になりました。この権利で、チームはファン向けの催し、商業的な取り組み、フラッグフットボールの普及を海外で行えます。
日本の権利を持つのはロサンゼルス・ラムズだけです。日本で特定のチームと催しを開きたい場合は、ラムズがこの制度で何をできるのかを確かめることから始めます。ほかのチームと組む場合は、その権利が米国内に限られるのかを契約書で確認します。
(参考)NFL International | Global Markets Program(2026年3月30日) – NFL.com
契約する会社|米国の現地法人か日本の本社か
3社の例はいずれも、米国の現地法人や事業会社が契約や発表の主体になっていました。米国で販売や採用をしている会社が契約すれば、販売店や工場がある地域での施策に直接つなげられます。日本の本社が契約する場合は、費用をどの会社が負担し、成果をどの会社の目標として測るのかを先に決めておきます。
日本での露出と発信|使える地域と言語を契約書に書く
米国の試合やスタジアムで名前が出ても、日本の顧客や社員に届くとは限りません。日本のウェブサイトやSNSでNFLのマークや試合の写真を使いたいなら、使える国と言語、承認の手順を契約書に書いておきます。協賛先の素材を使った発信の進め方はスポンサーのSNS発信を参考にしてください。
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海外への支払い|源泉徴収の対象になるかを確かめる
国税庁によると、日本で業務を行う者から受ける工業所有権等や著作権の使用料のうち国内の業務に関わるものや、職業運動家などの役務を日本で提供したことの対価は、外国法人や非居住者にとっての国内源泉所得に当たります。日本の会社が商標の使用料を払う場合や、選手を日本の催しに招く場合は、源泉徴収が要るかを確かめます。
源泉徴収は支払うときに行い、原則として翌月10日までに納めます。租税条約に別の定めがある場合は条約に従うので、契約の前に税理士に確認しておきます。会計上の扱いはスポンサー料の勘定科目で整理しています。
(参考)No.2885 非居住者等に対する源泉徴収のしくみ – 国税庁
Q. 日本でNFLのチームと組むにはどのチームに相談すればよいですか?
2026年時点で、NFLの制度で日本の権利を持つのはロサンゼルス・ラムズだけです。NFLは各チームに海外の国ごとの権利を与えており、日本ではラムズがファン向けの催しや商業的な取り組みを行えます。リーグ全体のマークを使いたい場合は、チームではなくNFLと話を進めます。
NFLのスポンサーのまとめ
NFLのスポンサーは、誰と契約するかで使える権利が大きく変わります。数値の出典は本文の各セクションに記載しています。大会の階層ごとにスポンサーを分ける考え方は、ワールドカップのスポンサーの階層とも比べられます。
- NFLのスポンサーは、リーグ、チーム、放送局の3つの窓口に分かれ、得たいもので相談先が決まる
- 試合のユニフォームに表示できるのはリーグの公式パートナーのロゴで、チームが売れるのは練習着のパッチなど
- スーパーボウルのCMは放送局から買うもので、NFLのマークを使う権利はNFLとの契約で得る
- パッカーズの年次報告では収入の約6割がリーグからの全国収入で、スポンサー収入は地元収入の中に含まれる
- 日本企業ではトヨタ、ソニー、日産が公式に発表されており、日本でチームの権利を持つのはラムズ(2026年3月時点)
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