アンブッシュマーケティングとは|スポーツ大会で企業が避ける表現

アンブッシュマーケティングとは|スポーツ大会で企業が避ける表現 スポーツマーケティング

大きな国際大会が近づくと、販促の会議に「日本代表応援セール」や「メダル獲得でポイント2倍」といった案が並びます。公式スポンサーではないけれど、大会のマークを使わなければ問題はないだろう。そう考えて進めてよいのか、広報や法務の担当者は判断に迷うところです。

アンブッシュマーケティングとは、公式スポンサーなどの権利を持たない企業が、大会のマークや名称を無断で使ったり、大会の知名度やイメージを利用して広告や販促をしたりすることです。日本にこれを名指しで禁じる法律はありませんが、主催者は商標法などの現行の法律と、独自のガイドラインの両方で対応しています。ガイドラインは、マークを使っていなくても大会を想起させる表現までを対象にしています。

この記事では、日本オリンピック委員会(JOC)や大会の組織委員会が公開している文書と、法律の条文をもとに、何が便乗とされるのか、スポンサーではない企業に何ができるのかを整理します。一般的な内容の紹介であり、個別の表現がどう扱われるかは、権利者と弁護士・弁理士に確かめてください。文書はいずれも2026年10月11日に確認したものです。

アンブッシュマーケティングとは権利を持たない企業の便乗広告のこと

アンブッシュマーケティングは、法律の用語ではありません。大会の主催者が、ガイドラインのなかで使っている呼び名です。JOCは「いわゆる便乗広告」と言い換えています。

JOCは2023年6月に「オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン」を出しました。そのなかで、正当な権利がないのに知的財産を使うことと、オリンピックなどの知名度、評判、イメージを利用または流用することを、アンブッシュマーケティングと説明しています。「故意であるか否かを問わず」と書かれており、知らずに行った場合も対象に含める書き方です。

オリンピック以外の大会にも、同じ考え方の文書があります。主な主催者の説明を並べます。

主催者と文書 対象になる行為(文書の説明)
JOC「オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン Ver.1.0」(2023年6月) 正当な権利がないのに知的財産を使うこと。オリンピックなどの知名度、評判、イメージを利用または流用すること
愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会「ブランド保護ガイドライン Ver.04」(2026年6月) アジア競技大会の知的財産を使い、大会の知名度、評判、イメージを利用または流用する便乗広告
東京2025世界陸上財団「権利保護ガイドライン Ver. 2」(2025年7月) スポンサーなどの権利者以外が、許可なく商業目的で、大会や世界陸連との関係性を示唆すること
日本サッカー協会「ロゴの呼称などの使用について」 無断で「サッカー日本代表」「SAMURAI BLUE」などの呼称やロゴを使った商業活動や広告宣伝活動(アンブッシュの語は使っていない)
日本スポーツ協会「国民スポーツ大会企業協賛に関するガイドライン」 協賛社など以外が、大会との関連を示唆または想起させるマーケティング活動をすること(アンブッシュの語は使っていない)

主催者の文書が説明する、便乗にあたる行為(出典:各主催者の公開文書。2026年10月11日に確認)

言い回しは違っても、2つの層がある点は共通です。1つはマークや名称の無断使用、もう1つは大会のイメージの流用や、大会と関係があるかのような見せ方です。国民スポーツ大会の協賛の区分は、国スポの協賛の記事で扱っています。

(参考)オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン Ver.1.0(2023年6月発行) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)ブランド保護ガイドライン Ver.04 2026.06 – 公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会

(参考)東京2025世界陸上競技選手権大会 権利保護ガイドライン(Ver. 2 2025年7月) – 公益財団法人東京2025世界陸上財団

(参考)ロゴの呼称などの使用について – 公益財団法人日本サッカー協会

(参考)国民スポーツ大会企業協賛に関するガイドライン – 公益財団法人日本スポーツ協会

Q. アンブッシュマーケティングとは何ですか?

公式スポンサーなどの権利を持たない企業や団体が、大会のマークや名称を無断で使ったり、大会の知名度やイメージを利用して広告や販促をしたりすることです。日本オリンピック委員会(JOC)は「いわゆる便乗広告」と説明しています。法律の用語ではなく、大会の主催者がガイドラインで使っている呼び名です。

公式スポンサーは協賛金と引き換えに知的財産を使う権利を得ている

アンブッシュマーケティングで守られる権利の流れ。権利者を中心に、公式スポンサー、ライセンシー、選手・競技団体、消費者、非スポンサー企業が渡すものと受け取るもの

主催者が便乗を止めるのは、スポンサーの仕組みが、権利を限られた相手だけに与えることで成り立っているからです。上の図は、権利者を中心にしたお金と権利の流れを表しています。

JOCのガイドラインによると、日本国内では、国際オリンピック委員会(IOC)またはJOCと契約したパートナーに対してのみ、協賛金の対価として、オリンピックやJOCに関わる知的財産を使える権利が与えられています。愛知・名古屋2026アジア競技大会の組織委員会も、大会パートナーの協賛金と、ライセンシーが払うロイヤリティを財源に大会を準備、運営し、その対価として知的財産の使用を認めると説明しています。ライセンシーとは、ライセンス契約で知的財産の使用の許諾を受けた事業者のことです。

集まったお金の使い道も書かれています。JOCは、協賛金を含む収入を、国際総合競技大会への選手の派遣などの事業に使い、加盟する競技団体へ選手強化資金として配分していると説明しています。選手は、その派遣を受けて大会に出場します。

消費者は、公式ライセンス商品を買うことで、この流れに加わります。日本サッカー協会は、ロゴなどを使って商品化を行う場合、公認を証明するオフィシャルライセンスマークの表示が必要だとしています。

権利を持たない企業は、この流れの外にいます。協賛金を払っていないので、知的財産を使う権利も得ていません。JOCは、便乗が知的財産を侵害するだけでなく、パートナーのマーケティング活動を妨げ、大会の運営や選手の育成、強化のための資金の調達にも大きな影響を及ぼすと説明しています。IOCが専門の業者に依頼し、商標の出願の状況や、企業の広告宣伝、販売促進の状況を定期的に監視しているとも書かれています。

あわせて読みたいスポーツスポンサーとは|種類・金額・仕組みを企業向けに解説›

(参考)オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン Ver.1.0(2023年6月発行) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)ブランド保護ガイドライン Ver.04 2026.06 – 公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会

(参考)ロゴの呼称などの使用について – 公益財団法人日本サッカー協会

アンブッシュマーケティングには商標法など3つの法律で対応している

アンブッシュマーケティングを名指しで禁じる法律は、日本にはありません。主催者の文書は、大会の知的財産が、商標法、不正競争防止法、著作権法などで保護されていると説明しています。それぞれの法律が何を定めているのかを、条文で確かめます。

以下は条文の紹介です。ある表現が権利の侵害にあたるかどうかは、使い方や場面で変わります。個別の判断は、弁護士や弁理士に確かめてください。

商標法|登録された商標を広告に付けることも使用にあたる

商標法は、商標権を持つ者が、指定した商品やサービスについて、登録商標を使う権利を専有すると定めています(第25条)。商品そのものに付ける場合だけでなく、広告や価格表に標章を付けて展示したり配ったりすることも、「使用」に含まれます(第2条第3項第8号)。指定した商品やサービスについて、登録商標に類似する商標を使うことなども、侵害とみなされます(第37条)。

権利者は、侵害する者や、侵害するおそれがある者に対して、停止や予防を請求できます(第36条)。商標権を侵害した者には、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方という罰則があります(第78条)。

他人が「オリンピック」などを自分の商標として登録することも、認められていません。特許庁の商標審査基準は、公益に関する団体や事業を表す著名な標章と同じか似ている商標は登録できないという規定(第4条第1項第6号)の例に、「オリンピック」「OLYMPIC」「五輪」の文字、五輪を表した図形、「IOC」「JOC」を挙げています。これは登録についての基準で、広告で使ってよいかどうかを述べたものではありません。

(参考)商標法(昭和三十四年法律第百二十七号) – e-Gov法令検索

(参考)商標審査基準 第3 五 第4条第1項第6号(国、地方公共団体等の著名な標章) – 特許庁

不正競争防止法|広く知られた表示で混同させる行為を定めている

不正競争防止法は、他人の商品や営業を表すものとして広く知られた表示と同じか似た表示を使い、混同を生じさせる行為を、不正競争と定めています(第2条第1項第1号)。他人の著名な表示を、自分の商品や営業の表示として使う行為も同じです(同項第2号)。営業上の利益を侵害された者は、差止めや損害賠償を請求できます(第3条、第4条)。

国際機関の標章についての規定もあります。その国際機関と関係があると誤認させるような方法で、省令が定める国際機関の標章を商標として使うことを、許可を受けた場合を除いて禁じています(第17条)。この省令の表には、国際オリンピック委員会と国際パラリンピック委員会が載っています。

愛知・名古屋2026のガイドラインは、大会名称などを使ったセールや、のぼり旗の掲出といった例に、「不正競争防止法に抵触する恐れがあります」と注記しています。「抵触する」と言い切っていない点は、そのまま受け取ってください。

(参考)不正競争防止法(平成五年法律第四十七号) – e-Gov法令検索

(参考)不正競争防止法第十六条第一項及び第三項並びに第十七条に規定する外国の国旗又は国の紋章その他の記章及び外国の政府若しくは地方公共団体の監督用若しくは証明用の印章又は記号並びに国際機関及び国際機関を表示する標章を定める省令(平成六年通商産業省令第三十六号) – e-Gov法令検索

(参考)第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)ブランド保護ガイドライン Ver.04 2026.06 – 公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会

著作権法|エンブレムやマスコットの複製が対象になる

著作権法は、著作者が著作物を複製する権利を専有すると定めています(第21条)。著作物の例には、美術、写真、映画が挙げられています(第10条)。侵害に対しては、停止や予防を請求できます(第112条)。

大会に当てはめると、エンブレムやマスコット、公式の写真や映像が対象になります。東京2025世界陸上のガイドラインは、大会ロゴや大会マスコットを著作物の例に挙げていました。法律とは別に、観客が私的な目的で撮った写真や動画も、商業目的には使えないとしています。許可されない例には、自社の従業員が会場で撮った決勝のスタートの写真を、自社のSNSで使うことが挙げられています。

選手の写真には、選手本人の肖像の権利も重なります。使用料や申請先は、スポーツ選手の肖像権の使用料の記事で扱っています。

(参考)著作権法(昭和四十五年法律第四十八号) – e-Gov法令検索

(参考)東京2025世界陸上競技選手権大会 権利保護ガイドライン(Ver. 2 2025年7月) – 公益財団法人東京2025世界陸上財団

ガイドラインは法律より広い範囲に協力を求めている

アンブッシュマーケティングについて法律が定める範囲と主催者のガイドラインが求める範囲の重なりを示すベン図。マークの無断使用は両方の対象

法律の条文と、主催者のガイドラインは、対象にしている範囲が同じではありません。上の図は、条文とガイドラインの記載をもとにした本記事の整理です。

重なるのは、エンブレムやロゴ、大会名称の無断使用のように、どちらの文書にも出てくる行為です。ガイドラインだけに出てくるのは、大会を想起させる表現、出場選手への応援や祝福の発信、社史や社内報での言及、壮行会の対外的な発信などです。JOCは、知的財産を使っていなくても、使う時期やほかの要素との組み合わせでオリンピックなどを想起させるものは、アンブッシュマーケティングになるとしています。

専用の法律を作るかどうかは、国会でも問われました。2019年3月20日の参議院内閣委員会で、内閣官房の審議官は、オリンピック・パラリンピックの知的財産は、商標法、著作権法、不正競争防止法などで法的な保護が講じられていると答えています。現行法の枠内で対応し、新しい法制度は考えていないのかという重ねての質問にも、「そのとおりでございます」と答えました。

つまり、「法律に触れなければ自由」とも、「ガイドラインに反したら違法」とも言えません。ガイドラインは法律ではありませんが、主催者は、法律に基づく差止めなどの対応を明記しています。東京2025世界陸上では、会場で特定の企業の旗を掲げるなど、アンブッシュマーケティングと認められる行為があった場合、入場を断るか、退場してもらうと定められていました。契約や規約を通じた対応もあるわけです。

(参考)オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン Ver.1.0(2023年6月発行) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)第198回国会 参議院 内閣委員会 第4号(平成31年3月20日) – 国会会議録検索システム(国立国会図書館)

(参考)東京2025世界陸上競技選手権大会 権利保護ガイドライン(Ver. 2 2025年7月) – 公益財団法人東京2025世界陸上財団

Q. アンブッシュマーケティングは違法ですか?

アンブッシュマーケティングを名指しで禁じる法律は、日本にはありません。ただし主催者は、大会のマークや名称などの知的財産が、商標法、不正競争防止法、著作権法などで保護されていると説明しています。政府は2019年3月の国会で、現行法の枠内で対応し、新しい法制度は考えていないと答弁しました。個別の表現がどう扱われるかは、権利者と弁護士・弁理士に確かめてください。

公式ガイドラインは使用できない例を具体的に挙げている

どんな表現が便乗とされるのかは、ガイドラインの例を見るとつかめます。JOCは、オリンピックパートナー以外の企業について、アンブッシュマーケティングに含まれるものを挙げています。大会のイメージを使ったもの、大会名などを使ったり連想させたりするイベントやキャンペーン名、企業として出場選手の応援や祝福を発信したもの、大会に関連する受注や貢献の実績を披歴するものです。

公式の文書に載っている例を、表にまとめます。

表現や行為の例 文書での扱い 出どころ
「〇〇社はオリンピック日本代表を応援しています」「がんばれ!オリンピック日本代表」という広告 掲出できない JOC よくあるご質問
日本代表選手団のメダル獲得を使ったキャンペーン(絵の例は「メダルGETでポイント2倍キャンペーン」) NG例 JOC ガイドライン
実際の大会で使われたことを表現した広告(絵の例は「東京2020 大会で実際に使用されたスポーツ用品です」) NG例 JOC ガイドライン
「東京からパリへ」「Road to PARIS」「いよいよ幕が上がる4年に1度のスポーツの祭典」 オリンピックを想起しやすい表現の例 JOC ガイドライン(個人スポンサー等や競技団体スポンサー向け)
契約選手の「オリンピック出場が内定しました!」というお知らせ 発信できない例 JOC ガイドライン(同上)
「アジア競技大会セール」「目指せ!愛知・名古屋2026」 問題になる例 愛知・名古屋2026 ブランド保護ガイドライン
「東京2025世界陸上割引」をうたうSNS投稿 許可されない事例 東京2025世界陸上 権利保護ガイドライン
自社名が入ったバナーのスタジアムでの掲示 許可されない事例 東京2025世界陸上 権利保護ガイドライン

公式のガイドラインが挙げる、使用できない表現や行為の例(出典:JOC、愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会、東京2025世界陸上財団の公開文書。2026年10月11日に確認)

表の4行目と5行目は、選手個人のスポンサーや、競技団体のスポンサーに向けたページの例です。選手と契約している企業でも、オリンピックへの出場の内定やメダルの獲得を、自社のサイトやSNS、プレスリリースで発信することはできないとされています。

社内向けの媒体も例外ではありません。JOCは、オリンピックスポンサー以外の企業は、社史や社内報を含めて、オリンピックに言及したり写真を使ったりすることはできないと答えています。オリンピックに言及する形で、社屋に懸垂幕を掲げることや、オリジナルのグッズを作って無料で配ることも、できないとされています。

大会に企業名を付ける協賛にも決まりがあります。JOCは競技団体に向けて、オリンピックなどに関連する競技大会やイベントに、冠スポンサーを付けることはできないとしています。冠の付いた既存の大会が日本代表の選考会を兼ねる場合は、大会の名称には入れず、大会を説明する文章のなかで選考会であることに触れる形が可能です。冠の仕組みは、冠スポンサーの記事で解説しています。

(参考)オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン Ver.1.0(2023年6月発行) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)よくあるご質問 – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)ブランド保護ガイドライン Ver.04 2026.06 – 公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会

(参考)東京2025世界陸上競技選手権大会 権利保護ガイドライン(Ver. 2 2025年7月) – 公益財団法人東京2025世界陸上財団

表現の位置は大会との結びつきと商業性の2つの軸で整理できる

アンブッシュマーケティングの公式ガイドラインが挙げた表現の例を、大会との結びつきの強さと広告・販促の色合いの2軸に置いた図

公式の例を並べると、判断の軸が2つ見えてきます。大会との結びつきがどれだけ強いかと、広告や販促の色合いがどれだけ濃いかです。上の図は、公式の文書が「できる」「できない」を示した例だけを、2つの軸の上に置いたものです。位置は本記事の整理で、主催者が示した図ではありません。

右上には、使用できないとされた例が集まります。大会名を使ったセール、オリンピック日本代表の応援広告、契約選手の出場内定の告知です。左上の「世界選手権の応援」は、JOCが使用できる例に挙げた表現で、オリンピックではない特定の大会の名前を明記しています。

下の段は、広告や販促の色合いが薄い場面です。対外的な発信をしない壮行会、年表への事実の記載、ほかの大会と並べた戦歴の紹介は、条件つきで可能とされています。ただし、図のどこに入るかで扱いが決まるわけではありません。同じ言葉でも、出す時期や組み合わせる絵で受け取られ方が変わるため、迷う表現は権利者に確かめてください。

(参考)オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン Ver.1.0(2023年6月発行) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)よくあるご質問 – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)ブランド保護ガイドライン Ver.04 2026.06 – 公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会

スポンサーではない企業が代わりにできる4つの行動

便乗とされる表現を避けるだけでは、企画は前に進みません。公式の文書が「できる」と書いていることと、正式に権利を得る道を、4つにまとめます。

自社が持っている権利の範囲を契約書で確かめる

最初に確かめるのは、自社がすでに持っている権利です。クラブや競技団体、選手と契約している企業は、契約に書かれた範囲で、名称やロゴ、肖像を使えます。ただし、その相手が持っていない権利までは使えません。

東京2025世界陸上のガイドラインは、選手や各国の代表選手団のスポンサーに対して、大会のスポンサーだと誤認されないよう、協賛の対象を明確にすることを求めていました。Jリーグの規約も、リーグの名称やロゴと、クラブのチーム名やエンブレムを、別々のものとして定義しています。クラブのスポンサーであることと、リーグや大会の名前を使えることは、同じではないわけです。契約書で確かめる項目は、スポーツスポンサー契約の記事にまとめています。

(参考)東京2025世界陸上競技選手権大会 権利保護ガイドライン(Ver. 2 2025年7月) – 公益財団法人東京2025世界陸上財団

(参考)Jリーグ規約 – 公益社団法人日本プロサッカーリーグ

大会名を使いたいときは権利者の窓口に相談する

大会の名称やマークを販促に使いたいなら、正式に権利を得るのが正面の道です。JOCは、スポンサーやライセンシーになりたい場合は、JOCへ相談するよう案内しています。愛知・名古屋2026の組織委員会も、知的財産の使用を希望する場合は、事前に連絡するよう求めていました。

国内で開かれる大会にも、協賛の募集があります。ワールドマスターズゲームズ2027関西は、3つのレベルの協賛パッケージでスポンサーを募集しており、呼称権や大会ロゴの使用権を協賛のメリットに挙げています。大会の概要は、ワールドマスターズゲームズ2027の記事で紹介しています。

(参考)よくあるご質問 – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)ブランド保護ガイドライン Ver.04 2026.06 – 公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会

(参考)パートナー – ワールドマスターズゲームズ2027関西

選手や競技団体の協賛企業は大会名を明記して応援する

応援の表明が、すべてできないわけではありません。JOCのガイドラインは、選手個人のスポンサーや競技団体のスポンサーについて、使用できる例を示しています。「がんばれ!〇〇ジャパン、世界選手権日本代表を応援しています」「XYZ競技W杯 日本代表選手を応援しています」の2つです。

どちらも、オリンピックではない特定の大会の名前を明記しています。逆に、オリンピックなどの大会期間に合わせて「ABC社は、XYZジャパンを応援しています」とだけ出す形は、使用できない例とされています。オリンピックなどの日本代表チームだと誤認させないよう、特定の大会名称を記載するなどの対応が求められています。

選手の紹介ページでは、オリンピックなどを強調せず、ほかの大会の経歴と並べて記載する場合に限り、プロフィールの一部として戦歴を書けます。大会期間中に選手の肖像を広告に使う条件は、オリンピック憲章の規則40に基づいて、大会ごとにJOCが定めています。2026年のミラノ・コルティナ冬季大会では、期間中に個人スポンサーの出稿量が増えた場合は、アンブッシュ広告とみなすとされていました。

あわせて読みたいルール40とは|スポンサー企業が大会期間中にできること›

(参考)オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン Ver.1.0(2023年6月発行) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)オリンピック憲章(2025年1月30日から有効) – 国際オリンピック委員会・公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)第25回オリンピック冬季競技大会(2026/ミラノ・コルティナ)TEAM JAPAN選手等の肖像使用に関するガイドライン(2025年8月 ver1.0) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

社内の壮行会は対外的な発信をしない形で開く

所属する選手を送り出す壮行会や、帰国後の報告会、祝勝会は、開くことができます。JOCは、オリンピックスポンサー以外の企業でも実施は可能だとしたうえで、対外的な発信やPRはできないとしています。対外的な発信とは、プレスリリースの配信、ウェブへの掲載、SNSへの投稿など、世間一般に向けて公表、周知することです。オリンピックに特化した記者会見は、実施できません。

当日、選手個人がメディアの取材を受けることは、問題ないとされています。ただし、主催する企業や商品のPRに関連づけないこと、報道で映る可能性がある場合は、ウェアなどにオリンピックスポンサー以外の企業のロゴを出さないことが求められています。

社史に載せる場合は、年表のなかで、過去の出来事の1つとして事実を記載する形なら可能です。商品やサービスと結びつけたり、PRに使ったりすることはできません。

(参考)よくあるご質問 – 公益財団法人日本オリンピック委員会

(参考)オリンピック等の知的財産の使用に関するガイドライン Ver.1.0(2023年6月発行) – 公益財団法人日本オリンピック委員会

Q. オリンピックの応援メッセージを企業が出すことはできますか?

日本オリンピック委員会(JOC)は、オリンピックスポンサー以外の企業が「〇〇社はオリンピック日本代表を応援しています」「がんばれ!オリンピック日本代表」といった広告を掲出することはできないとしています。選手個人のスポンサーによるお祝いのメッセージの発信や、選手の感謝のメッセージのリツイート、シェアも認められていません。壮行会や報告会は、対外的な発信をしない形であれば開けます。

まとめ|アンブッシュマーケティングは大会の公式文書で先に確かめる

便乗かどうかの線は、法律の条文だけでは引けません。要点を振り返ります。

  • アンブッシュマーケティングは、権利を持たない企業が、大会のマークや名称を無断で使ったり、大会の知名度やイメージを利用したりする便乗広告のこと
  • 日本に名指しで禁じる法律はなく、商標法、不正競争防止法、著作権法などの現行法で対応している
  • 主催者のガイドラインは、大会を想起させる表現や、出場選手への応援や祝福の発信まで対象にしている
  • JOCは、大会名を使ったキャンペーン、メダル獲得に合わせた販促、社史や社内報での言及を、できない例に挙げている
  • 契約の範囲の確認、権利者への相談、特定の大会名を明記した応援、対外的な発信をしない壮行会が、代わりにできる行動になる

企画書に大会の名前が出てきたら、まずその大会の公式サイトで「知的財産」「ブランド保護」「権利保護」のページを探してください。文書の名前や連絡先は、大会ごとに違います。そのうえで、個別の表現は権利者と弁護士・弁理士に確かめると、公開の直前で止まることを防げます。スポーツを使った販促の全体像は、スポーツマーケティングとはの記事で整理しています。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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