スポーツの社会問題10例|最近の数字と国・企業の解決策

スポーツの社会問題10例|最近の数字と国・企業の解決策 スポーツビジネス

スポーツの社会問題は、暴力・体罰やハラスメント、選手への誹謗中傷、熱中症、脳しんとうなどのけが、運動する子としない子の二極化、ドーピング、違法なスポーツ賭博、競技団体のガバナンス、部活動の地域展開と教員の負担の10個が代表的な例です。最近の数字では、日本スポーツ協会の暴力行為等相談窓口への相談が2025年度に603件で過去最多、熱中症の救急搬送が2025年5〜9月に10万510人で集計開始以来最多でした。ここでは10の問題を最新の公的な数字と国の対応で一覧にし、自治体・団体の解決例と、企業が自社で関われることまでをまとめます。

夏の大会の応援に行った社員から、子どもが練習中に倒れたと聞く。協賛しているチームの選手のSNSに、ひどい書き込みが並んでいる。スポーツの社会問題は、ニュースの向こう側の話ではなく、従業員や協賛先を通じて会社の身近なところで起きています。

  1. スポーツの社会問題は人権・健康と安全・公正・支える仕組みに分けられる
  2. スポーツの社会問題の例|最近の数字と国の対応の一覧
  3. 人を傷つける問題|暴力・ハラスメント・誹謗中傷は相談が増え続けている
    1. 暴力・体罰|相談は2025年度に603件で過去最多
    2. ハラスメント|暴力よりも暴言やハラスメントの相談が多い
    3. 選手への誹謗中傷|1大会で疑いのある投稿が4,919件
  4. 健康と安全の問題|熱中症・けが・運動の二極化
    1. 熱中症|2025年の救急搬送は10万510人で過去最多
    2. けが・脳しんとう|転んで頭を打つ場面で多く起きる
    3. 運動の二極化|週60分未満の子どもの半減目標に届いていない
  5. 公正と支える仕組みの問題|ドーピング・賭博・ガバナンス・部活動
    1. ドーピング|国内の検査は2024年度に7,819検体
    2. 違法なスポーツ賭博|オンラインカジノへの誘導が法律で禁止された
    3. 競技団体のガバナンス|審査を受けた団体の結果は公開されている
    4. 部活動と教員の負担|令和8年度から地域展開が本格化した
  6. スポーツの社会問題の解決例と企業が関われること
    1. 自治体と民間事業者が休日の部活動を運営する例
    2. 競技団体が誹謗中傷を監視して削除を求める例
    3. 従業員の熱中症と運動不足に備える
    4. 協賛先の選び方と誹謗中傷への備え
  7. スポーツの社会問題のまとめ

スポーツの社会問題は人権・健康と安全・公正・支える仕組みに分けられる

スポーツの社会問題を人権、健康と安全、公正、支える仕組みの4つに分けた図。暴力・体罰、ハラスメント、誹謗中傷、熱中症、けが・脳しんとう、運動の二極化、ドーピング、違法な賭博、団体のガバナンス、部活動と教員の負担

スポーツの社会問題は、何が損なわれるかで見ると4つに分けられます。人が傷つけられる「人権」、体と命が危険にさらされる「健康と安全」、競技の正しさが崩れる「公正」、スポーツを続けるための組織や体制が揺らぐ「支える仕組み」です。

2025年9月1日に施行された改正後のスポーツ基本法も、問題ごとに国の役割を書き分けています。第14条はスポーツ事故や外傷の防止と気候の変動への対応、第29条は暴力やハラスメント、ネット上の誹謗中傷の防止、第29条の2は競技の不正な操作などの防止、第29条の3はドーピング防止活動を定めています。

この記事が扱うのは、人の健康・安全・公正に関わる問題です。市場規模やスタジアム、放映権といった業界やビジネスの課題は日本スポーツ業界の8つの課題で、国の政策を含めた構造的な課題は日本のスポーツが抱える課題で解説しています。

(参考)スポーツ基本法 – e-Gov法令検索

Q. スポーツの社会問題にはどんな例がありますか?

暴力・体罰、ハラスメント、選手への誹謗中傷、熱中症、けが(脳しんとう)、運動する子としない子の二極化、ドーピング、違法なスポーツ賭博、競技団体のガバナンス、部活動の地域展開と教員の負担などがあります。人権、健康と安全、公正、支える仕組みの4つに分けると、誰が何をすればよいかを整理しやすくなります。

スポーツの社会問題の例|最近の数字と国の対応の一覧

下の表は、10の社会問題について、官公庁や公的な団体が公表している最近の数字と、国などの最新の対応を並べたものです。数字の年度と定義は問題ごとに違うので、大きさを比べるのではなく、それぞれの問題がいまどの段階にあるかを見るのに使ってください。

社会問題 種類 最近の数字 国などの最新の対応
暴力・体罰 人権 日本スポーツ協会の相談窓口への相談603件で過去最多(2025年度) 2025年9月施行の改正後のスポーツ基本法第29条が、国と自治体に暴力等の防止措置を求める
ハラスメント 人権 相談は暴力より暴言・ハラスメントが多い傾向。被害者の74%が高校生以下 同じ第29条が、優越的な関係を背景にした言動や性的な言動も対象にする
選手への誹謗中傷 人権 東京2025世界陸上でAIが疑いを検知した投稿4,919件 同じ第29条がネット上の誹謗中傷を対象にする。JOCとJPCが相談窓口とSNSの監視を実施
熱中症 健康と安全 救急搬送10万510人で集計開始以来最多(2025年5〜9月) スポーツ基本法第14条が気候の変動への対応に留意するよう定める。職場の対策は2025年6月から義務化
けが・脳しんとう 健康と安全 中高生サッカーの脳しんとう3,343件(2012〜2022年の災害共済給付) JSCと筑波大学が受傷の起こり方を分析して公表(2026年1月)
運動の二極化 健康と安全 1週間の運動が60分未満の中学2年女子21.7%(令和7年度) 第3期スポーツ基本計画で、60分未満の子どもの割合を半減させる目標
ドーピング 公正 JADAの検査7,819検体、違反3件(2024年度) スポーツ基本法第29条の3に、国のドーピング防止活動を定める
違法なスポーツ賭博 公正 オンラインカジノの国内利用者は推計約196.7万人、年間賭額は約1兆2,423億円 改正ギャンブル等依存症対策基本法で、違法オンラインギャンブルへの誘導を禁止(2025年9月施行)
競技団体のガバナンス 支える仕組み JOCが令和7年度に審査した加盟17団体はすべて適合 スポーツ団体ガバナンスコード(中央競技団体向けは2023年9月改定)で審査
部活動と教員の負担 支える仕組み 中学校教諭の土日の部活動は1日1時間29分(令和4年度) 令和8年度から改革実行期間。休日の部活動の30.4%が地域展開する予定

出典:スポーツ基本法、日本スポーツ協会、JOC・JPC、消防庁、JSC・筑波大学、スポーツ庁、JADA、警察庁、ギャンブル等依存症対策基本法、JOC、文部科学省、厚生労働省の公表資料をもとに Human Soar 作成

並べて見ると、10の問題のうち多くで、2025年に法律や制度が動いています。スポーツ基本法の改正、ギャンブル等依存症対策基本法の改正、職場の熱中症対策の義務化がいずれも2025年に施行され、部活動は令和8年度から改革実行期間に入りました。数字が悪化している問題だけでなく、ルールが変わった直後の問題が多いことも、最近の特徴です。

(参考)スポーツ基本法 – e-Gov法令検索

(参考)ギャンブル等依存症対策基本法 – e-Gov法令検索

(参考)「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案」の概要について(職場における熱中症対策の強化関係) – 厚生労働省

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(令和7年度調査) – スポーツ庁・文化庁

Q. 最近ニュースになっているスポーツの社会問題は何ですか?

公的な資料で数字が確かめられるものでは、暴力・暴言・ハラスメントの相談の増加と、熱中症の救急搬送の増加が目立ちます。日本スポーツ協会の相談窓口への相談は2025年度に603件で過去最多となり、熱中症による救急搬送は2025年5月から9月に10万510人で、集計を始めた平成20年以降で最多でした。オンラインカジノなど違法なギャンブルへの誘導も、2025年9月から法律で禁止されています。

人を傷つける問題|暴力・ハラスメント・誹謗中傷は相談が増え続けている

人権に関わる3つの問題は、いずれも相談や検知の件数が多い状態が続いています。とくに子どもが被害者になる相談と、大会のたびに集中するネット上の書き込みが目立ちます。

暴力・体罰|相談は2025年度に603件で過去最多

日本スポーツ協会は2013年3月から「スポーツにおける暴力行為等相談窓口」を開いており、2025年度の相談は603件で過去最多でした。相談は窓口の開設以降増え続け、新型コロナウイルス感染症の影響で一時減ったあと、スポーツ活動の再開とともに再び増えています。

相談者の6割以上は保護者で、被害者の74%が高校生以下、うち小学生が被害者の相談が43%を占めています。指導の場で起きる問題が、大人の選手よりも子どもに集中していることが分かります。

(参考)【暴力行為等相談窓口】2025(令和7)年度の相談件数が過去最多を更新 – 日本スポーツ協会

(参考)不適切行為への対応(相談する・処分する) – 日本スポーツ協会

ハラスメント|暴力よりも暴言やハラスメントの相談が多い

日本スポーツ協会によると、近年は体に触れる「暴力」よりも、不適切かどうかの判断がより難しい「暴言」や「ハラスメント」の相談が多く寄せられる傾向にあります。同協会が一般の3,000名に聞いた調査では、1割以上が「競技力が向上するなら指導者のスポハラはあってもよい」という考えに近いと答えました。

改正後のスポーツ基本法第29条は、暴力に加えて、優越的な関係を背景とした言動で業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、性的な言動を挙げ、国と地方公共団体に必要な措置を講じるよう求めています。スポーツ団体にも、これらでスポーツを行う人の環境が害されないよう努めることを求めています。

(参考)不適切行為への対応(相談する・処分する) – 日本スポーツ協会

(参考)スポーツ基本法 – e-Gov法令検索

選手への誹謗中傷|1大会で疑いのある投稿が4,919件

JOCとJPC(日本パラリンピック委員会)は2025年3月25日に「アスリートへの誹謗中傷に対する共同声明」を出し、法務サポート、SNSなどの監視、広報・啓発、教育・研修、人材の育成の5つを柱とする対策事業を始めました。東京2025世界陸上の期間を含む監視では、AIが誹謗中傷の疑いがあると検知した投稿が4,919件ありました。

人の目で確かめて疑いありとされた投稿は514件で、弁護士の確認を経て287件に削除を求め、実際に削除されたのは98件でした。計算すると、削除を求めた投稿のうち消えたのは約34%です。書き込みは大会期間中に集中し、判定をめぐる報道が続いた日に急増していました。

あわせて読みたいスポーツアスリートの誹謗中傷対策|所属・協賛企業が備える5つのこと›

(参考)アスリート等に対する誹謗中傷対策事業に関する報告書 – 日本オリンピック委員会・日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会

健康と安全の問題|熱中症・けが・運動の二極化

健康と安全に関わる問題は、暑さとけがという「スポーツをしている最中の危険」と、そもそも体を動かさない人が増える「運動しないことの危険」の両方があります。国内だけでなく、世界でも同じ方向の数字が出ています。

熱中症|2025年の救急搬送は10万510人で過去最多

消防庁の調べでは、2025年5月から9月までの熱中症による救急搬送は10万510人で、集計を始めた平成20年以降で最多でした。高齢者が約57%を占め、入院が必要な中等症・重症が約36%でした。発生場所は住居が約38%で最も多く、道路工事現場・工場・作業所などの仕事場も約11%あります。

スポーツ基本法第14条は、国と自治体がスポーツ事故や外傷を防ぐ措置をとるときに、気候の変動への対応に特に留意するよう定めています。職場では、2025年6月1日施行の労働安全衛生規則の改正で、暑い場所での作業について、熱中症の疑いがある人を報告する体制と、作業からの離脱や体の冷却などの手順を決めて周知することが事業者の義務になりました。

あわせて読みたい職場の熱中症対策が義務化|2025年法改正の対応と罰則›

(参考)令和7年版 消防白書 トピックス3 熱中症による救急搬送の状況及び予防啓発の取組 – 消防庁

(参考)スポーツ基本法 – e-Gov法令検索

(参考)「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案」の概要について(職場における熱中症対策の強化関係) – 厚生労働省

けが・脳しんとう|転んで頭を打つ場面で多く起きる

JSCと筑波大学は2026年1月、学校の災害共済給付のデータを使って、中学・高校生のサッカーで起きた脳しんとうを分析した結果を公表しました。2012年から2022年のサッカーに関わるけがの申請696,600件から、脳しんとう3,343件を取り出して調べています。

直接のきっかけで最も多かったのは、他の選手と接触したあとに地面に頭がぶつかる場面で40.2%でした。強い衝突そのものだけでなく、競り合いでバランスを崩して転ぶ場面に注意が要るということです。発表は、少しでも症状があればその日の競技をやめ、医療者の評価を受けて段階的に復帰することが大切だとしています。

(参考)日本の中学・高校生サッカー競技における脳振盪の受傷メカニズム – 日本スポーツ振興センター・筑波大学

運動の二極化|週60分未満の子どもの半減目標に届いていない

スポーツ庁の令和7年度の全国調査では、体育の授業以外で1週間に420分以上運動する子どもの割合が小中学校の男女とも前年度より減りました。中学2年生の女子では、420分以上が54.6%いる一方、0分が17.4%、1分から60分未満が4.3%で、合わせて21.7%が週60分未満です。よく動く子と、ほとんど動かない子に分かれています。

第3期スポーツ基本計画は、週60分未満の児童の割合を令和3年度の12%から、生徒の割合を13%から半減させる目標を掲げています。計算すると目標はそれぞれ6%と6.5%です。令和7年度の60分未満の割合は、小学5年生で男子9.8%・女子17.3%、中学2年生で男子9.9%・女子21.7%で、男女どちらも目標の水準を上回っています。

大人も同じです。令和7年度の世論調査では、20歳以上で週1日以上スポーツをする人は51.7%で、男性55.0%、女性48.8%と男女の差は過去最大でした。世界保健機関(WHO)は2024年6月、2022年に世界の成人の31%、約18億人が推奨される身体活動量を満たしていなかったと発表しています。子どもの体力の推移は新体力テストの結果と推移で詳しく扱っています。

(参考)令和7年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査 報告書(調査結果の総括) – スポーツ庁

(参考)第3期スポーツ基本計画(令和4年3月25日) – 文部科学省

(参考)令和7年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の結果を公表します – スポーツ庁

(参考)Nearly 1.8 billion adults at risk of disease from not doing enough physical activity(2024年6月26日) – World Health Organization

Q. 世界ではスポーツや運動に関してどんな問題が起きていますか?

世界では大人の運動不足が広がっています。WHOは2024年6月、2022年に世界の成人の31%、約18億人が推奨される身体活動量を満たしていなかったと発表しました。2010年から約5ポイント増えており、このままでは2030年に35%まで上がると見込んでいます。

公正と支える仕組みの問題|ドーピング・賭博・ガバナンス・部活動

競技の正しさと、スポーツを続けるための体制に関わる問題です。ドーピングと賭博は競技の結果そのものへの信頼を、ガバナンスと部活動は選手や子どもを支える組織の持続性を左右します。

ドーピング|国内の検査は2024年度に7,819検体

日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の2024年度の事業報告によると、国内で実施したドーピング検査は、JADAの管轄が6,875検体、国際競技連盟などの管轄が944検体で、合計7,819検体でした。同じ年度の報告に載った規則違反などは3件(うち1件は2023年度に発生し2024年度に決定)で、バイアスロンと自転車競技の事案でした。

スポーツ基本法第29条の3は、国がJADAなどと連携して、ドーピングの検査、教育と啓発、調査と研究の体制を整えることを定めています。

(参考)令和6年度(2024年度)事業報告 – 日本アンチ・ドーピング機構

(参考)スポーツ基本法 – e-Gov法令検索

違法なスポーツ賭博|オンラインカジノへの誘導が法律で禁止された

警察庁の委託調査(令和7年1月)は、スポーツベッティングなどを含むオンラインカジノの国内の利用者を推計約196.7万人、年間の賭け金の総額を約1兆2,423億円と見込んでいます。経験者は約336.9万人と推計され、20代と30代で利用が多くなっています。

2025年9月25日に施行された改正ギャンブル等依存症対策基本法の第9条の2は、インターネットで不特定の人に違法オンラインギャンブル等のサイトを示すことや、そこへ誘導する情報を発信することを禁じました。日本でのスポーツ賭博の扱いと協賛・広告の注意点はスポーツベッティングは日本で違法かで整理しています。

(参考)オンラインカジノの実態把握のための調査研究 報告書(令和7年1月) – 警察庁

(参考)ギャンブル等依存症対策基本法 – e-Gov法令検索

競技団体のガバナンス|審査を受けた団体の結果は公開されている

スポーツ庁は2019年6月にスポーツ団体ガバナンスコード(中央競技団体向け)を定め、2023年9月29日に改定しました。JOCが公表した令和7年度の適合性審査の結果では、審査した加盟17団体がすべて「適合」で、一部の団体には要改善事項も付いています。コードの13原則と審査の読み方はスポーツ団体ガバナンスコードとはで、不正や不祥事を含めた全体像はスポーツインテグリティとはで解説しています。

(参考)スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>(令和5年9月29日改定) – スポーツ庁

(参考)令和7年度 スポーツ団体ガバナンスコード適合性審査 審査結果及び審査所見一覧 – 日本オリンピック委員会

部活動と教員の負担|令和8年度から地域展開が本格化した

文部科学省の教員勤務実態調査(令和4年度)では、中学校の教諭が土日に部活動・クラブ活動に充てる時間は1日あたり1時間29分で、平成28年度の2時間9分から40分減りました。部活動の顧問をする教諭を見ると、担当する部活動が週6日以上活動している人が6.9%いました。

スポーツ庁と文化庁の調査(令和7年度)では、「改革実行期間」が始まる令和8年度に、休日の部活動の30.4%(38,954部)が地域展開して地域クラブ活動になる予定です。平日は1割弱で、休日より進みが緩やかです。現場で何が壁になっているかは部活動の地域移行はなぜ進まないのかで詳しく解説しています。

(参考)教員勤務実態調査(令和4年度)集計【確定値】 – 文部科学省

(参考)部活動改革の取組状況に関する調査(令和7年度調査) – スポーツ庁・文化庁

スポーツの社会問題の解決例と企業が関われること

スポーツの社会問題ごとに企業が取れる行動と使える仕組みを示した図。熱中症は報告体制と手順を決め改正労働安全衛生規則に対応、運動不足は運動の機会をつくりスポーツエールカンパニー、誹謗中傷は相談先を決めJOC・JPCの相談窓口、団体の不祥事は審査結果を確かめる

解決に向けた取り組みは、自治体と民間事業者、競技団体、企業のそれぞれで始まっています。企業が自社で関われるのは、従業員の熱中症と運動不足、協賛先の選び方、選手への誹謗中傷への備えの3つで、どれも公的な制度や公開情報を使って進められます。

自治体と民間事業者が休日の部活動を運営する例

千葉市は令和8年度、休日の部活動の地域展開として、令和8年9月から令和9年3月までの7か月間、土日祝日に25回程度の活動を行います。対象は約160部程度で、参加費は月額1,000円、生活保護受給世帯と就学援助受給世帯は申請により免除されます。

運営は区ごとに民間事業者が担い、中央区・緑区は株式会社オークスベストフィットネス、花見川区・美浜区はリーフラス株式会社、稲毛区・若葉区はJR東日本スポーツ株式会社です。教員の休日の負担を、地域のスポーツ事業者が引き受ける形になっています。

(参考)部活動地域展開に関する令和8年度の取組み – 千葉市

競技団体が誹謗中傷を監視して削除を求める例

JOCとJPCの対策事業では、AIと人の目で投稿を確かめ、弁護士の確認を経て削除を求めています。前述の東京2025世界陸上では287件に削除を求め、98件が削除されました。対象は、JOCやJPCの加盟団体に所属して強化指定を受けた選手や、その指導者などの関係者です。

所属や協賛先の選手がこの対象に入るかどうかで、被害を受けたときに使える窓口が変わります。対象外の選手のためには、代わりに会社として相談先と対応の手順を決めておくと、書き込みが集中したときに慌てずに済みます。

(参考)アスリート等に対する誹謗中傷対策事業に関する報告書 – 日本オリンピック委員会・日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会

従業員の熱中症と運動不足に備える

暑い場所での作業がある事業場では、2025年6月から、熱中症の疑いがある人を報告する体制と、悪化を防ぐ手順を決めて周知することが義務になっています。対象は暑さ指数(WBGT)28度または気温31度以上の作業場で、継続して1時間以上または1日4時間を超えて行われる作業です。

運動不足の対策では、スポーツ庁が従業員のスポーツ活動の促進に積極的な企業・団体を「スポーツエールカンパニー」として認定しています。2026年は過去最多の1,635団体が認定され、従業員のスポーツ実施率が70%以上の団体には「+(プラス)認定」が付きます。

(参考)「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案」の概要について(職場における熱中症対策の強化関係) – 厚生労働省

(参考)「スポーツエールカンパニー2026」過去最多の1,635団体を認定 – スポーツ庁

協賛先の選び方と誹謗中傷への備え

協賛先を選ぶときは、相手が中央競技団体ならガバナンスコードの適合性審査の結果と要改善事項を確かめます。結果は公開されているので、契約の前に読めます。協賛契約には、暴力やハラスメントなどの不祥事が起きたときの報告と対応を書いておくと、問題が起きてから話し合うより早く動けます。

協賛先の選手が誹謗中傷を受けたときに、会社がどこまで関わるかも先に決めておきます。社会課題の解決そのものを事業にした企業の例は、次の記事で紹介しています。

あわせて読みたいスポーツで社会課題を解決する企業事例と方法›

(参考)令和7年度 スポーツ団体ガバナンスコード適合性審査 審査結果及び審査所見一覧 – 日本オリンピック委員会

Q. 企業はスポーツの社会問題に対して何ができますか?

自社の従業員と協賛先から始められます。暑い職場での熱中症の報告体制と手順づくり、従業員が運動する機会づくり、協賛先の競技団体のガバナンス審査結果の確認、所属選手や協賛先の選手が誹謗中傷を受けたときの相談先の確認が代表的です。どれも公的な制度や公開情報を使って進められます。

スポーツの社会問題のまとめ

スポーツの社会問題は、人権、健康と安全、公正、支える仕組みの4つに分けると、どこから手をつけるかが見えてきます。数値の出典は本文の各セクションに記載しています。

  • 代表的な例は、暴力・体罰、ハラスメント、誹謗中傷、熱中症、けが・脳しんとう、運動の二極化、ドーピング、違法な賭博、団体のガバナンス、部活動と教員の負担の10個
  • 暴力行為等の相談は2025年度に603件、熱中症の救急搬送は2025年に10万510人と、どちらも過去最多
  • 2025年に改正スポーツ基本法、改正ギャンブル等依存症対策基本法、職場の熱中症対策の義務化が施行され、部活動は令和8年度から改革実行期間に入った
  • 週60分未満しか運動しない子どもの割合は、第3期スポーツ基本計画の半減目標の水準を上回っている
  • 企業は、従業員の熱中症と運動不足の対策、協賛先のガバナンスの確認、誹謗中傷への備えから関われる

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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