Netflixのスポーツ中継とは|WBC配信の実績と企業の確認点

Netflixのスポーツ中継とは|WBC配信の実績と企業の確認点 スポーツマーケティング

協賛している大会の中継が、次回から地上波ではなく動画配信になるらしい。そう聞いた日の会議で、「うちのロゴが映る回数は減るのか」「CMはどこに出せばいいのか」と問われても、手元にあるのは去年までのテレビの視聴率の資料だけ。そんな場面が、現実のものになってきました。

Netflixは2024年11月のボクシング興行からスポーツの生中継を広げ、日本では2026年3月のワールドベースボールクラシック(WBC)全47試合を独占で配信しました。Netflixの発表では、視聴は延べ3,140万人(ビデオリサーチの推計にもとづく延べ接触人数)です。企業にとって変わるのは、広告枠を買う相手と、視聴者の数え方と、露出がどの権利に含まれるかの3点です。

この記事では、Netflix、権利元、スポーツ庁と総務省の検討会の資料など、公式に確認できた内容だけをもとに、何が起きたのかと、協賛や広告を出す企業が確かめる点を整理します。内容は2026年10月12日時点のものです。

  1. Netflixのスポーツ中継は2024年に広がり日本では2026年のWBCが最初
    1. 米国ではボクシングとNFLとWWEの順に配信した
    2. 日本での生中継は2026年3月のWBCから始まった
    3. FIFAとは2027年の女子W杯と2030年のW杯で組む
  2. 2026年WBCの日本での配信内容|公式発表で確認できる項目
  3. WBCの配信実績|Netflixが公表した視聴の数字と読み方
    1. 全47試合で延べ3,140万人が視聴した
    2. 視聴者の3割超が35歳未満で女性が約48%だった
    3. 前回大会の数字とは定義をそろえてから比べる
  4. 中継が配信に移ると協賛と広告のお金の流れはこう変わる
    1. 配信事業者は視聴者の利用料と広告収入で放映権料を払う
    2. 広告と提供の枠は配信の中にも設けられている
    3. 協賛の権利は中継の権利とは別に主催者と結ぶ
  5. 放映権は見方ごとの層に分かれて売られる|独占と併用の読み方
    1. WBCは配信の独占でワールドカップは放送と配信の併用だった
    2. 国内の配信各社は放送局と分け合う形を公表している
  6. ユニバーサルアクセスをめぐる日本の議論は論点整理の段階にある
    1. 英国は国民的関心行事の独占を法律で制限している
    2. 日本ではスポーツ庁と総務省の検討会が意見を聞いている
  7. 協賛や広告を出す企業が契約の前に確かめる5つの点
    1. 中継の媒体と対象の地域
    2. 配信の画面での看板やロゴの扱い
    3. 見逃し配信とハイライトと切り抜きでの露出
    4. 視聴データの定義と提供の有無
    5. 配信の広告枠の買い方
  8. まとめ|Netflixのスポーツ中継は権利の層と数字の定義で読む

Netflixのスポーツ中継は2024年に広がり日本では2026年のWBCが最初

Netflixのスポーツ中継の年表。2024年のボクシング興行とNFL、2025年のWWE Raw、2026年のWBC全47試合の日本での配信、2027年のFIFA女子ワールドカップ(米国・カナダ)、2030年のFIFAワールドカップのスペインでの配信を時期の順に示した図

Netflixのスポーツの生中継は、米国の単発の興行から始まり、毎週の番組、国際大会へと広がってきました。公式の発表で確かめられた出来事を、年の順に見ていきます。

米国ではボクシングとNFLとWWEの順に配信した

2024年11月15日、Netflixはテキサス州のスタジアムで行われたボクシングの興行(ジェイク・ポール対マイク・タイソン)を生中継しました。Netflixは翌日、メインの試合を世界で6,000万世帯がライブで視聴したと発表しています(Netflixの速報データ)。

同じ年の12月25日には、NFL(米国のプロアメリカンフットボールリーグ)の2試合を配信しました。Netflixはこれを、自社にとって初めてのNFLの中継だと説明しています。2025年1月からは、プロレス団体WWEの週1回の番組「Raw」を、米国、カナダ、英国、ラテンアメリカなどで独占的に配信しています。

(参考)60 Million Households Tuned in Live for Jake Paul vs. Mike Tyson(2024年11月16日) – Netflix

(参考)NFL Christmas Gameday Live Comes to Netflix With Blimps, Hot Cocoa Trucks and Two Superstar Performances(2024年12月23日) – Netflix

(参考)Netflix to Become New Home of WWE ‘Raw’ Beginning 2025(2024年1月23日) – Netflix

日本での生中継は2026年3月のWBCから始まった

日本については、Netflixが2025年8月26日に、2026年のWBCを日本国内で独占的にライブ配信すると発表しました。Netflixはこの発表で、日本国内では初めてのライブ配信だと述べています。大会は2026年3月5日に始まり、全47試合が配信されました。

その後も日本での配信は続いています。Netflixは、米大リーグ(MLB)の開幕戦を2026年3月26日(日本時間)に世界で同時に配信すると発表し、2026年10月1日からはWWEの番組を日本でも独占的に配信しています。

(参考)WORLD BASEBALL CLASSIC INC.とNetflixが、2026年ワールドベースボールクラシックの日本における独占パートナーシップを発表 – Netflix

(参考)Netflix Steps Up to the Plate: MLB Opening Night on Netflix Scores 3 Million US Viewers(2026年4月1日) – Netflix

(参考)Netflixが、日本におけるWWEの新たな視聴先に(2026年9月29日) – Netflix

FIFAとは2027年の女子W杯と2030年のW杯で組む

国際サッカー連盟(FIFA)は、2027年と2031年のFIFA女子ワールドカップについて、米国での独占的な権利をNetflixと契約したと発表しています。FIFAは、Netflixが大会をまるごと取得するのはこれが初めてだと説明しています。2027年の大会は、6月24日から7月25日までブラジルで開かれます。2026年10月13日のNetflixの発表では、この女子ワールドカップの放映権は米国とカナダが対象と書かれています。

同じ2026年10月13日、Netflixは2030年のFIFAワールドカップについて、スペインとアンドラでの独占的な権利を取得したと発表しました。全104試合をNetflixでライブ配信します。2030年の大会はスペイン、ポルトガル、モロッコが開催し、大会100周年の記念試合がアルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイで行われます。

ここで注意したいのは、権利が国や地域ごとに売られていることです。FIFA女子ワールドカップの契約は米国とカナダ、2030年のワールドカップの契約はスペインとアンドラが対象で、どちらも日本での配信を決めたものではありません。

(参考)FIFA and Netflix sign historic broadcast deal for 2027 and 2031 editions of FIFA Women’s World Cup – FIFA

(参考)Netflix Secures Exclusive Rights in Spain and Andorra to the FIFA World Cup 2030™(2026年10月13日) – Netflix

2026年WBCの日本での配信内容|公式発表で確認できる項目

2026年のWBCは、日本ではNetflixだけが試合を中継しました。発表された条件を、項目ごとに表にまとめます。

項目 公式に確認できた内容
発表 2025年8月26日。Netflixが、大会を運営するWORLD BASEBALL CLASSIC INC.(WBCI)との独占パートナーシップとして発表
対象の試合 全47試合(20チーム。東京、サンフアン、ヒューストン、マイアミの4都市)
視聴の方法 ライブとオンデマンド(見逃し)。Netflixのすべてのプランで視聴できる
広告 Netflixのヘルプページは、ライブ配信ではプランを問わず広告が表示されることがあると案内している
地上波の中継 行われていない(スポーツ庁の資料)。民放はニュース番組などで試合結果を伝えた(民放連の資料)
放映権料 公表されていません

2026年WBCの日本での配信の条件(出典:Netflixの2025年8月26日の発表、Netflixヘルプセンター、スポーツ庁・総務省の検討会の資料。2026年10月12日に確認)

WBCIは、MLBが所有し、MLB選手会と共同で大会を運営する団体です。前回の2023年大会は、民放連の資料によるとTBSテレビとテレビ朝日が地上波で中継し、Amazon Prime Videoが日本戦の全試合などをライブ配信していました。2026年大会について、スポーツ庁の資料は「米ネットフリックス社が、日本国内向け放映権を独占的に取得した。その結果、日本国内では地上波での放映が行われていない」と書いています。

料金については、Netflixのヘルプページに、広告つきスタンダードが月額890円、スタンダードが月額1,590円と載っています(2026年10月12日時点)。放映権料は、Netflixの発表にも検討会に出されたNetflixの資料にも書かれていません。スポーツ庁の資料には報道をもとにした推定額が載っていますが、当事者が公表した金額ではないため、この記事では扱いません。

(参考)WORLD BASEBALL CLASSIC INC.とNetflixが、2026年ワールドベースボールクラシックの日本における独占パートナーシップを発表 – Netflix

(参考)Netflix上の広告 – Netflixヘルプセンター

(参考)プランと料金 – Netflixヘルプセンター

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会(第1回)資料3 事務局説明資料 – スポーツ庁・総務省

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会 ご説明資料(第2回 資料2) – 一般社団法人日本民間放送連盟

Q. 2026年のWBCは日本ではNetflixの独占配信でしたか?

独占配信でした。Netflixは2025年8月26日に、大会を運営するWBCIとの独占パートナーシップにより、全47試合を日本国内でライブとオンデマンドで配信すると発表しています。スポーツ庁の資料は、日本国内では地上波での放映が行われていないと書いています。

WBCの配信実績|Netflixが公表した視聴の数字と読み方

Netflixは大会の後の2026年3月25日に、日本での視聴の実績を発表しました。同じ数字は、8月20日に開かれたスポーツ庁と総務省の検討会にも資料として出されています。数字は定義とあわせて読む必要があります。

全47試合で延べ3,140万人が視聴した

Netflixの発表では、全47試合の視聴は3,140万人、最も多かった日本対オーストラリア戦は1,790万人です。この人数は、ビデオリサーチの推計データにもとづく「延べ接触人数」で、1人が複数の端末で見た場合を含みます。ライブ配信に加えて、試合終了後24時間以内に視聴された見逃し配信も入っています。

つまり、加入者の数でも、重複を除いた人数でもありません。社内で数字を引用するときは、「延べ接触人数」「24時間以内の見逃しを含む」という条件を落とさないようにしてください。

(参考)2026 ワールドベースボールクラシック 日本のNetflixで、過去最大の視聴を記録!(2026年3月25日) – Netflix

視聴者の3割超が35歳未満で女性が約48%だった

視聴者の属性も公表されています。Netflixの発表では、35歳未満が視聴者数の30%を超え、19歳以下が14.2%でした。20歳以上の視聴者に占める女性の割合は約48%です。検討会の資料では、50歳以上が44.0%、35歳から49歳が23.4%、20歳から34歳が18.5%と示されています。

端末では、約85%がテレビで視聴し、約38%がスマートフォンやタブレットでも視聴しました。日本戦の1試合あたりの平均視聴時間は、1アカウントあたり147分です。また、視聴者の55%が、日本戦以外の試合を少なくとも1試合見ています(3月5日から23日が対象)。

属性は、Netflixの記録をもとに、ビデオリサーチの数理モデルで推計したものだと注記されています。協賛や広告の届く相手を考える材料になりますが、推計であることは押さえておきましょう。

(参考)2026 ワールドベースボールクラシック 日本のNetflixで、過去最大の視聴を記録!(2026年3月25日) – Netflix

(参考)2026ワールドベースボールクラシック 配信の取組と実績(検討会第3回 資料2) – Netflix合同会社

前回大会の数字とは定義をそろえてから比べる

前回の2023年大会について、民放連は検討会の資料で、日本戦7試合の地上波の生中継をリアルタイムで見た人を推計9,446.2万人(ビデオリサーチ調べ)と示しています。

この数字と2026年の3,140万人は、対象の試合も、数え方も、媒体も違います。片方は日本戦7試合の地上波のリアルタイム視聴、もう片方は全47試合の配信の延べ接触人数です。2つを並べて「増えた」「減った」と結論づけることはできません。比べるときは、権利元や配信事業者に、同じ定義の数字があるかを確かめるところから始めます。

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会 ご説明資料(第2回 資料2) – 一般社団法人日本民間放送連盟

中継が配信に移ると協賛と広告のお金の流れはこう変わる

スポーツ中継のお金の流れの関係図。大会の主催者を中心に、配信事業者と放送局が放映権料を払って中継の権利を受け取り、協賛企業が権利金を払って協賛権を受け取り、来場者がチケット代を払う

企業がスポーツに払うお金には、主催者に払う協賛の権利金と、中継の広告枠に払う広告費の2つがあります。中継が配信に移ると動くのは、主に広告費の支払い先です。関係者のやり取りを、検討会に出された資料をもとにこの記事で整理しました。

配信事業者は視聴者の利用料と広告収入で放映権料を払う

スポーツ庁は検討会の資料で、放映権のお金の流れを図にしています。放送局も配信事業者も、大会の主催者に放映権料を払って、中継する権利を受け取ります。違うのはその元手です。地上波のテレビはCMの広告収入を、配信事業者は視聴者の利用料(広告収入を含む場合もある)を、支払いに充てています。

電通のスポーツ未来研究所も、同じ検討会で、多くの国際スポーツ大会は主に広告費で成り立ってきたが、視聴者からの資金も流れ込むようになっていると説明しました。主催者には、このほかに来場者のチケット代や商品の代金も入ります。放映権の一般的な仕組みは、スポーツ放映権の仕組みの記事で扱っています。

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会(第1回)資料3 事務局説明資料 – スポーツ庁・総務省

(参考)スポーツ観戦の現在地とスポーツを支える収益構造(検討会第4回 資料1) – スポーツ未来研究所(株式会社電通)

広告と提供の枠は配信の中にも設けられている

配信になっても、広告の枠がなくなるわけではありません。Netflixのヘルプページは、ライブ配信ではプランを問わず広告が表示されることがあると案内しています。2024年のNFLの配信では、Netflixは、試合前の番組内コーナーやキックオフ前の時間帯に、企業の提供枠を設けたと発表しました。

日本については、Netflixの広告営業の責任者が2026年10月8日の投稿で、WBCでは試合が最も盛り上がる場面には広告を入れなかったと説明しています。また、2026年1月から9月に配信した広告キャンペーンの数は前年の同じ時期の約12倍になり、日本で毎週配信しているWWEでは11月からライブ広告のパッケージを提供するとしています。いずれもNetflix自身の発表です。

(参考)Netflix上の広告 – Netflixヘルプセンター

(参考)NFL Christmas Gameday Live Comes to Netflix With Blimps, Hot Cocoa Trucks and Two Superstar Performances(2024年12月23日) – Netflix

(参考)「広告を、夢中の、真ん中へ。」 4年目のNetflix Adsが目指すもの(2026年10月8日) – Netflix

協賛の権利は中継の権利とは別に主催者と結ぶ

電通の資料の図では、スポンサーは主催者に権利金を払って協賛権を受け取り、それとは別に、放送局や配信事業者に広告費を払ってCMの枠を受け取ります。中継の媒体が変わっても、協賛の契約の相手は主催者のままです。

一方で、協賛で得た看板やロゴの露出がどれだけの人に届くかは、中継を誰がどう見るかに左右されます。検討会の第1回では、「視聴者数とスポンサーの露出」が論点の1つとして挙がりました。配信に移ると露出が増えるのか減るのかを示した公的な資料は、確認した範囲にはありません。自社の契約ごとに数字で確かめることになります。

あわせて読みたいスポンサーシップ アクティベーションとは|スポーツ協賛の企業事例›

(参考)スポーツ観戦の現在地とスポーツを支える収益構造(検討会第4回 資料1) – スポーツ未来研究所(株式会社電通)

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会(第1回) 議事録 – スポーツ庁

放映権は見方ごとの層に分かれて売られる|独占と併用の読み方

「放映権」は1つの権利ではなく、見方ごとに分かれた権利の総称です。電通のスポーツ未来研究所は、検討会の資料で、スポーツの見方を6つの層に分け、それぞれに対応する権利を示しました。

見方 対応する権利
現地観戦(スタジアム・アリーナ) チケッティング
パブリックビューイング パブリックビューイング権
生中継の視聴(最初から最後まで) 放映権・配信権(ライブ)
見逃し・アーカイブの視聴 見逃し配信・アーカイブ権
ハイライトの視聴(長めのダイジェストや特別番組) ハイライト権・ニュース映像の権利
切り抜き・ショート動画・ニュース番組の短い映像 ハイライト権・ニュース映像の権利

スポーツの見方と対応する権利(出典:スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会 第4回 資料1〈スポーツ未来研究所・株式会社電通〉をもとに作成)

同じ資料は、放映権は複数の権利の総称で、個別の権利として取引される場合も多いとまとめています。独占か併用かは、この層のどこを誰が持つかの違いとして読めます。

WBCは配信の独占でワールドカップは放送と配信の併用だった

2026年のWBCでは、Netflixが国内の配信権を独占しました。民放連の資料によると、民放には中継の権利がなく、ニュース番組のスポーツコーナーなどで試合結果を伝えています。パブリックビューイングは、Netflixが選手ゆかりの29の自治体と学校と組んで77回開き、11,636人が参加したと発表しています。

同じ年のFIFAワールドカップは形が違いました。民放連の資料では、NHK、日本テレビ、フジテレビが地上波で中継し、DAZNが全試合をライブ配信しています(日本戦は無料)。DAZNは検討会で、全104試合を配信し、日本代表の全試合と決勝、準決勝、3位決定戦を無料にしたと説明しました。

Netflixが2026年10月13日に発表した2030年のワールドカップのスペインでの契約も、独占の配信と無料の視聴を組み合わせた形です。全104試合をNetflixで配信したうえで、各節1試合をスペインで無料で配信し、スペイン代表の全試合と準決勝2試合、決勝は全国の無料放送局でも放送できるようにするとしています。無料放送の提携先の詳しい内容は、大会が近づいてから知らせるとしています。

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会 ご説明資料(第2回 資料2) – 一般社団法人日本民間放送連盟

(参考)2026ワールドベースボールクラシック 配信の取組と実績(検討会第3回 資料2) – Netflix合同会社

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会(第3回 資料1) – DAZN Japan

(参考)Netflix Secures Exclusive Rights in Spain and Andorra to the FIFA World Cup 2030™(2026年10月13日) – Netflix

国内の配信各社は放送局と分け合う形を公表している

国内のほかの配信事業者も、検討会で自社の考え方を示しています。U-NEXTは、従来から有料で配信されてきたスポーツは月額のモデル、国民的な関心の高いイベントはテレビ局との「共同モデル」と説明しました。日本人選手が出る大会をテレビ局が、全試合や全競技の専門的な中継をU-NEXTが担う分け方です。

過去の大会では、2022年のFIFAワールドカップでABEMAが全試合を無料でライブ配信した例もあります。NHKは検討会で、放送と配信の権利を分けて売る海外の事業者との商習慣の違いが、交渉の難しさになっていると述べました。配信各社の事業の違いは、スポーツOTT配信企業の比較でくわしく紹介しています。

(参考)U-NEXTのスポーツ配信について(検討会第3回 資料3) – 株式会社U-NEXT

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会 ご説明資料(第2回 資料2) – 一般社団法人日本民間放送連盟

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会(第2回) 議事録 – スポーツ庁

ユニバーサルアクセスをめぐる日本の議論は論点整理の段階にある

WBCの独占配信をきっかけに、日本でも「誰もが見られる機会」をどう確保するかの議論が始まりました。2026年10月12日時点では、国の検討会が関係者から意見を聞いて論点を整理している段階で、制度の導入が決まったという公的な資料は確認できていません。以下は公的な資料の紹介で、個別の契約についての法的な判断は弁護士などの専門家に確かめてください。

英国は国民的関心行事の独占を法律で制限している

検討会の第2回では、マルチメディア振興センターの研究員である委員が、海外の制度を説明しました。資料によると、「スポーツへのユニバーサルアクセス」は、国民的な関心の高いスポーツ行事を、追加の経済的な負担なく、全国で視聴できるようにするという政策の考え方で、1950年代の英国で確立しました。統一された定義はないとも書かれています。

英国では、1996年放送法の第97条から第105条が、指定された行事の放映権を1社が排他的に取得することを制限しています。資料は、2024年のメディア法による改正で動画配信が対象に加えられたこと、グループAの行事にオリンピックやFIFAワールドカップの本大会などが指定されていることを紹介しています。あわせて、スポーツ団体の放映権収入や商業的な自由を制約しているという指摘があることも書いています。

(参考)スポーツへのユニバーサルアクセス-諸外国の制度と最新動向-(検討会第2回 資料1) – 一般財団法人マルチメディア振興センター

日本ではスポーツ庁と総務省の検討会が意見を聞いている

スポーツ庁と総務省は、2026年5月20日に「スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会」を設けました。開催要綱は、検討課題の1つに、WBCをはじめとした国際大会で国民が観る機会に関する論点を挙げています。9月10日までに4回開かれ、競技団体、放送局、配信事業者、有識者が意見を述べました。

立場によって、述べた内容は違います。民放連は、放映権の取得は最終的には放送事業者の判断によるべきだとしたうえで、国民的なスポーツを誰もが見られる環境を整えることが重要だと述べました。日本サッカー協会は、地上波とともに配信でも見られる形が必要ではないかと述べ、日本野球機構は、放映権料が主催者から先でチームや選手、競技の振興に流れていく仕組みを踏まえることが重要だと述べています。

制度について、総務省の局長は2026年4月16日の衆議院総務委員会で、個別のスポーツ番組をどう放送するかは放送事業者が判断するのが原則だと答弁しました。海外のような制度の導入を検討するには、放送番組の編集の自由を基本とする放送法の枠組みとの整合性などの、慎重に検討すべき課題があるとも述べています。

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会 開催要綱(令和8年5月20日) – スポーツ庁・総務省

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会 – スポーツ庁

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会(第1回) 議事録 – スポーツ庁

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会(第2回) 議事録 – スポーツ庁

(参考)第221回国会 衆議院 総務委員会 第8号(令和8年4月16日) – 国会会議録検索システム(国立国会図書館)

Q. ユニバーサルアクセス権とは何ですか?

国民的な関心の高いスポーツ行事を、追加の経済的な負担なく広く視聴できるようにするという政策の考え方です。スポーツ庁と総務省の検討会に出された資料によると、1950年代の英国で確立し、統一された定義はありません。日本では2026年5月から、スポーツ庁と総務省の検討会が関係者の意見を聞いて論点を整理しています。

協賛や広告を出す企業が契約の前に確かめる5つの点

スポーツ中継が配信に移るときに企業が確かめる点を、協賛している、広告を出す、検討中の3つの立場で分けた図。協賛している企業は媒体と地域、看板やロゴの映り方、見逃しと切り抜きを確かめる

中継の形が変わるときに確かめる点は、自社の立場で変わります。すでに協賛しているなら露出の扱いを、広告を出すなら枠の買い方を、これから検討するなら視聴者の層を、先に確かめます。ここまでの事実から、この記事で5つに整理しました。

中継の媒体と対象の地域

最初に確かめるのは、どの媒体が、どの国や地域で中継するのかです。前半で見たとおり、権利は地域ごとに売られていて、同じ大会でも国によって中継する事業者が違います。2030年のワールドカップでも、Netflixが発表した権利はスペインとアンドラに限られます。

海外にも商品を売っている企業なら、協賛の露出を届けたい国で、誰が中継するのかを主催者に聞きます。契約の期間中に中継の事業者が変わる可能性と、そのときに協議できるかどうかも確かめておくと安心です。

配信の画面での看板やロゴの扱い

協賛で得た会場の看板やロゴが、配信の映像でどう映るのかを確かめます。配信では、独自のカメラや映像の技術を加える例があります。Netflixは検討会の資料で、WBCの中継に、ホームベース周辺のカメラやドローンを使ったと紹介しています。

カメラの位置が変われば、映りやすい場所も変わります。看板の料金の考え方はスタジアム広告の料金の記事で紹介していますが、配信で中継される試合については、過去の映像を見せてもらうのが確実です。

(参考)2026ワールドベースボールクラシック 配信の取組と実績(検討会第3回 資料2) – Netflix合同会社

見逃し配信とハイライトと切り抜きでの露出

生中継のほかに、見逃し配信、ハイライト、SNSの短い動画で、自社の露出がどう扱われるかを確かめます。これらは生中継とは別の層の権利です。

電通の調査では、2026年のFIFAワールドカップに関するYouTubeの動画の再生数は、権利元などの公式ハイライトが4.54億回、権利元以外が投稿した切り抜きや解説などの動画が18.48億回でした(大会の期間中に投稿された動画が対象)。Netflixも、WBCの関連動画がSNSで累計2.7億回を超えて再生されたと発表しています。生中継の外で見られる量は、無視できない大きさになっています。

(参考)スポーツ観戦の現在地 最新の調査から(検討会第4回 追加資料1) – スポーツ未来研究所(株式会社電通)

(参考)2026 ワールドベースボールクラシック 日本のNetflixで、過去最大の視聴を記録!(2026年3月25日) – Netflix

視聴データの定義と提供の有無

協賛の効果を社内で報告するには、視聴の数字が要ります。どの数字を、どの定義で、いつ受け取れるのかを確かめます。

公表される数字の定義は、事業者ごとに違います。NetflixはWBCについて延べ接触人数と属性の推計を、DAZNはFIFAワールドカップ2026について延べ視聴者数(約6,700万人)とユニーク視聴者数(約1,615万人)を、検討会で示しました。テレビの視聴率と同じ物差しではないので、前の年と比べる方法を、契約の前に決めておきます。

(参考)2026ワールドベースボールクラシック 配信の取組と実績(検討会第3回 資料2) – Netflix合同会社

(参考)スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会(第3回 資料1) – DAZN Japan

配信の広告枠の買い方

協賛とあわせて中継にCMを出してきた企業は、配信での広告の買い方を確かめます。地上波のCM枠とは、売り手も、売り方も、効果の測り方も違います。

Netflixは、ライブ配信向けの広告パッケージや、他の動画サービスと重複を抑えて配信する仕組みを発表しています。大会の協賛社でない企業が中継に広告を出すときは、主催者が大会の名称やロゴの使い方に決まりを設けていることがあるので、表現に注意が要ります。協賛の階層の例はワールドカップのスポンサーの階層の記事で紹介しています。契約の条項の解釈は、弁護士などの専門家に確かめてください。

あわせて読みたいアンブッシュマーケティングとは|スポーツ大会で企業が避ける表現›

(参考)「広告を、夢中の、真ん中へ。」 4年目のNetflix Adsが目指すもの(2026年10月8日) – Netflix

Q. Netflixのスポーツ中継に企業は広告を出せますか?

出せる枠があります。Netflixのヘルプページは、ライブ配信ではプランを問わず広告が表示されることがあると案内しています。日本では、2026年3月のWBCで広告が配信され、WWEの中継では2026年11月からライブ広告のパッケージを提供するとNetflixが発表しています。

まとめ|Netflixのスポーツ中継は権利の層と数字の定義で読む

スポーツの中継が配信に移る動きは、日本でも現実になりました。要点を振り返ります。

  • Netflixは2024年のボクシングとNFL、2025年のWWEを経て、日本では2026年3月のWBC全47試合を独占で配信した
  • Netflixが公表した視聴は延べ3,140万人で、ビデオリサーチの推計による延べ接触人数。前回大会の地上波の数字とは定義が違う
  • 企業の支払いは、主催者への協賛の権利金と、放送局や配信事業者への広告費に分かれる。配信に移ると動くのは主に広告費の支払い先
  • 放映権は生中継、見逃し、ハイライトなどの層に分かれ、独占か併用かは大会ごとに違う
  • 日本の制度は、スポーツ庁と総務省の検討会が論点を整理している段階にある

協賛している大会やクラブがあるなら、次の更新の前に、「どの媒体が、どの地域で中継するのか」「視聴の数字をどの定義で受け取れるのか」の2つを、主催者に聞いてみてください。スポーツを使ったマーケティングの全体像は、スポーツマーケティングとはで整理しています。

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About The New株式会社 代表取締役 森永 昂
執筆者
About The New株式会社 代表取締役 森永 昂

新卒で東証プライム上場の社会人教育・コンサルティング企業に入社し、人材育成・組織開発に従事。その後、別企業でメディア・プラットフォーム事業の責任者を務める。

2025年5月に About The New株式会社 を設立。スポーツの現場で培われた知見を組織開発・人材育成の文脈に翻訳し、研修・チームビルディング・イベントの企画運営を行っています。

「知識を得る」で終わらせず「行動が変わる」ところまでを設計することを大切にしています。ご相談は contact@aboutthenew.co.jp まで。

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